電力需要は毎年夏に需要のピークを迎える。原発事故直後は「原発が再稼動しないと電力不足となり、大停電が起きる」と政府や電力会社が主張してきたが、現実に国内の原発が全基停止しても電力不足は起きていない。
その要因の一つが太陽光発電だ。普及が進む太陽光発電が昼間に活躍し、電力需要のピーク(最大電力)時に必要な電力を供給する役割を果たしている。真夏のピーク時には原発の代替電源になりうるのではないか、という声さえも出ている。
猛暑となった8月第2週は晴天が続いて太陽光発電が貢献
「この夏は昼になると太陽光発電がたくさん入るので、原発はなくても困らない。昼過ぎには火力発電の出力を絞るくらいだ」
8月上旬、電力関係者がこっそりと漏らした。この夏、8月上旬が全国的に猛暑となり、東京では7月31日から8月7日まで「猛暑日」が8日間連続し、新記録を更新した。猛暑となれば全国でエアコン需要が増えるため、電力会社の需要ピーク(最大電力)も8月第2週に集中した。東京電力は8月7日午後1時に4957万キロワットの最大電力を記録。ところが、原発停止でも供給力は5375万キロワットあり、実績使用率は92%。供給力には8%もの余裕があった。
注目すべきはピーク時の供給力の内訳だ。東電によると、5375万キロワットのうち、東電が自社で発電するのは4384万キロワットで、約2割に当たる991万キロワットは「他社からの受電」となっている。この他社受電分の中には「固定価格買い取り制度」で東電が買い取る太陽光発電や風力発電などが含まれているが、他の大手電力からの融通分は含まれていない。
東電の送電網に接続している太陽光発電など再生可能エネルギーは2015年6月末現在で790万キロワットあり、晴天であれば原発8基分の電力を供給できる計算になる。猛暑となった8月第2週は晴天が続いており、他社受電の991万キロワットの半数程度は太陽光発電が貢献したとみられている。
夏の電力需要ピークに適した電源?
原発が全基停止しても電力不足が起きず、電力需要ピーク時に太陽光発電が活躍する構図は、他の電力会社も同じだ。関西電力のピーク需要(最大電力)は8月4日午後4時で2557万キロワット。これに対するピーク時供給力は2781万キロワットで、このうち「他社からの受電」は634万キロワット。関電は6月末時点で原発3基に当たる303万キロワットの太陽光発電が送電網に接続しており、他社受電の半数近くを太陽光が占めたとみられる。
九州電力のピーク需要(最大電力)は8月6日午後4時で1500万キロワット。ピーク時供給力は1721万キロワットあり、うち他社からの受電は470万キロワット。九電は原発5基分に当たる517万キロワットの太陽光発電が送電網に接続しており、晴天時はフル活動したとみられる。
もちろん太陽光発電は日没後に発電ゼロとなり、曇天でも出力は下がる。しかし、真夏の電力需要のピークは晴天で気温の上がる午後に集中する。太陽光発電が最も活躍できるタイミングで、夏の電力需要ピークに適した電源だという声さえ出る。電力会社にとっても、真夏の需要ピーク時に民間の太陽光発電が電力を供給してくれることは、自社の火力発電の燃料代節約になるため悪いことではない。ただ、日が落ちても冷房需要が落ちないケースがあるため、太陽光発電が万能というわけではない。ただ、コストが高いこともあって電力会社に評判の悪い太陽光発電だが、使い道は意外にあるようだ。