線引きは容易ではない
具体的な課税強化策として、農水省と総務省は耕作放棄地だけに適用する新税の創設を検討している。現状の固定資産税が実質的に倍増する程度の規模を想定しているとみられる。
この場合、地方の「中山間地域」には、荒廃して木が生い茂って林のようになっているところもあり、農地として再生が見込めない土地は課税の対象から外れそうだ。優良な農地に再生できる放棄地に的を絞るということだ。
とはいえ、線引きは容易ではない。農水省によると再生可能な遊休農地は全国で15万ヘクタールほどとされるが、毎年現場を回って確認するはずの市町村や各地の農業委員会が実際には実態を把握しきれていないことも多いとの指摘もある。
政府は年末までに与党の議論も経て税額(税率)や導入時期などを決めたい考えだが、徴収実務を担う市町村の準備も考えると、導入は数年後になるとみられる。
ただし、自民党内には「所有者を苦しめる恐れがある」と、そもそも課税強化に反対の意見が根強い。貸し出しを増やそうという狙いにも、「先祖伝来の土地を貸すことへの抵抗感もある」(農水省)だけに、議論にはなお曲折がありそうだ。