税率一本化でビールは安くなる
複雑な税制をめぐって混乱も起きている。サッポロビールは「第3のビール」として販売していた「極ZERO」が国税庁から「第3のビールに該当しない」と指摘を受け、昨年に発泡酒として再発売し、過去の販売分の税額の差である115億円を追加納税したものの、社内検証の結果、「やはり第3のビールに該当する」として115億円の返還を求めている。
財務省や自民党税制調査会幹部は、こうした混乱に終止符を打つためにも、今年こそビール類の税額一本化に道筋をつけたい考えだ。ビール類全体の税収総額が変わらないように3種の税額を統一すると、350ミリリットル缶当たり約55円となり、この金額を軸に検討が進むとみられる。
だが、ビールが減税されたとしても、安さで人気を集めている発泡酒や第3のビールが増税されれば、消費者が「庶民いじめ」と反発するのは必至だ。来年夏に参院選を控える中、与党が「不人気政策」に踏み込めるかどうかは見通せない。
販売・開発戦略の練り直しを迫られるビール各社との協議も難題だ。アサヒビールとサッポロビールはビールの販売比率がそれぞれ6割強、5割強と半分以上を占めているが、キリンビールとサントリーは4割程度で発泡酒や第3のビールの比重が高い。税額一本化の影響は社によって異なり、意見調整は難航しそうだ。
財務省幹部は「国内市場が縮小する中、日本のビール各社は世界に打って出るべきなのに、税額の低い商品の開発に明け暮れている。税額が一本化されれば、世界で勝負できるビールの開発に集中できる」と意義を強調する。今年こそビール類の税額見直しに結論が出るのか、左党にとって目が離せない改正論議になりそうだ。