放送作家の鈴木おさむさんが長男の子育てをするため、放送作家の仕事を1年休業するなど、男性たちが育児に関わろうという動きが目立っている。
安倍晋三政権も「女性の活用」を提唱しているが、そのために欠かせない「イクメン」という存在は広がっていくだろうか。
現場では遠慮せざるを得ない
鈴木おさむさんに限らず、広島県の湯崎英彦知事、三重県の鈴木英敬知事と、ここ数年、育児休業をとる著名な男性が増えている。鈴木さんは自身のブログで、「僕の中では、育休というより、父親になるための勉強ということで、『父勉(ちちべん)』って言葉を勝手に作って、勝手に呼んでます」と書いている。肩肘張らず、自分のペースで育児に取り組みたいという姿勢がうかがえる。
社会学者や自治体関係者の間では「社会がイクメンを認めるようになっている」との見方が増えており、男性の育休を容認する空気感が育休取得を後押ししているといえそうだ。
しかし、実際に育休を取得している男性は全体の中ではまだまだ少数派。厚生労働省が6月にまとめた2014年度の雇用均等基本調査によると、女性の育休取得率は前年度より3.6ポイント高い86.6%だった。これに対し、男性の場合は前年度比0.27ポイントとわずかな増にとどまり、たったの2.30%。「2020年の男性の育休取得率は13%」という政府の目標には遠く及ばない。
育休を過去に取得したことがあるという40代の男性会社員は「育休を取ることは誰にでもできる。ただ、自分の仕事の穴を埋めてくれる同僚の負担がどうしても大きくなり、それを解消できる方法がない。このため育休取得を遠慮せざるを得ないのが現場の実態だ」と話す。
政府の姿勢は、いかにも中途半端
日本では高度経済成長期ごろから、男性が企業で長時間労働し、女性が家庭で家事や育児を担うという男女の働き方が作られてしまった。欧米の多くの国では、こうした仕組みを改善しようと、家族を支援するさまざまな取り組みが行われてきたが、日本では長時間労働する男性の働き方が変えられず、さまざまな弊害を生む状態が続いてきた。
日本の家庭政策に向ける公的な予算も少なく、子育て支援の予算は国内総生産(GDP)比で先進国の中でも最低レベルとされる。
社会や経済問題の研究者の間では、「今や、男女平等が進んでいる国の方が、GDPが高い」との声は多い。男女平等とワークライフバランスが経済成長の大きな要因でもあるというのだ。経済を成長に向かわせるためにも、子育て支援は不可欠というわけだ。
政府が積極的に、新しい男女の働き方の仕組み作りや、支援のための予算投入に積極的に動かなければどうにもならない。「女性活用」「男性の育休取得を増やせ」などのかけ声ばかり大きい政府の姿勢は、いかにも中途半端と言わざるを得ないようだ。