佐野研二郎氏(43)が手掛けた2020年東京五輪・パラリンピックの公式エンブレムをめぐり、ある噂がネットで持ち上がっている。佐野氏が手にするデザイン料は200億円にも上る、というものだ。
「発信源」とされるのは「尾木ママ」こと教育評論家の尾木直樹さん(68)のブログ記事で、まとめサイトやネットメディアが拡散、反響を集めている。
佐野氏が受け取るのは100万円(税込)だけ
尾木さんは2015年8月18日のブログ記事で、「素人にはよくわからないのですが...」とことわりつつ、
「東京オリンピックのエンブレム デザイナーにはいるお金 200億!と言われ 私たちもエンブレム入りのグッズ買えば料金の中にはデザイン使用料が入っているのではないのでしょうか!?」
と述べ、エンブレムをめぐりデザイナーが200億円を受け取るとの見方を示した。「200億」という数字の根拠やその概要は示していないが、これがまとめサイトや一部のネットメディアに取り上げられて拡散。ツイッターでは
「ふざけてる」
「冗談ではない!!」
と批判が噴出している。
尾木さんの指摘したように、エンブレム関連で佐野氏に200億円が支払われた、もしくは支払われる可能性はあるのか。14年9月に東京五輪・パラリンピック組織委員会がエンブレムデザインを公募した際、採用されたデザイナーへの賞金、制作費、著作権譲渡対価として提示した金額は100万円(税込)だった。100万円の中に著作権譲渡対価も含まれており、以後ライセンス料などエンブレム関連で発生する利益は組織委員会が受け取る条件だ。
組織委員会はJ-CASTニュースの取材に対し、
「デザイナーにお支払いする金額は100万円から変わっていません。エンブレムの著作権はすでに組織委員会側にあるので、ライセンス料はこちらで受け取ります」
と明かした。
デザイン料以外で佐野氏側に支払う費用や、「200億」という数字を想起させるような関連費用はないか、との質問にも「全くありません」とした。
佐野氏が主宰するデザイン事務所「MR_DESIGN」(東京都渋谷区)も
「賞金として100万円を受け取る予定です。エンブレムの著作権は組織委員会に譲渡しており、そこから派生するライセンス料はいただきません」
と回答している。
尾木ママ「テレビ番組で誰かが話していたのを聞き、驚いてブログに書いた」
では、今回浮上した「200億」という数字は何を根拠にしているのだろうか。発言の趣意を確認すべく尾木さんに取材したところ、番組名は「思い出せない」ものの、
「情報番組で(誰かが)話していたのを聞き、驚いてブログに書いた。その際、オリンピックのエンブレム使用料は(売上の)4~5%で、グッズなどに(エンブレムが)使用されると200億円くらいデザイナーに入ると言っていた」
と明かした。どうやら、ライセンス料を含めた収入を想定していたらしい。
尾木さんが見た番組かどうかは分からないが、15年8月17日放送の「NEWS23」(TBS系)では、宣伝会議の田中里沙編集室長が番組の取材に、
「グッズによる五輪エンブレムのライセンス使用料は4~5%くらいだ。北京、ロンドンオリンピックではグッズの総売り上げが4000~4500億円あり、200億円くらいの売上規模が考えられる」
と話している。ただ、200億円がそのままデザイナーの収入になるという発言は確認できなかった。