アートディレクターの佐野研二郎さん(43)が手がけた2020年東京五輪公式エンブレムの「酷似問題」が波紋を広げる中、複数のクリエイターが新たなエンブレムを考案し、インターネット上で反響を呼んでいる。
1人目は東京在住のフリーランスデザイナー、梅野隆児さんだ。2015年8月11日、ツイッターで作品を公開したところ大きな注目を集めた。
日本らしい「桜」や「扇」をモチーフに
梅野さんは「先日デザインの先輩と飲んだら『梅野くん案を出しなさい』と宿題出されたので、『ぼくのかんがえた東京五輪エンブレム』を1時間でつくりましたw」として、独自案をツイッターで公開した。
人気の高かった五輪招致ロゴと同じ「桜」をモチーフにしながら、東京の銀杏の日の丸を隠し持たせたという色鮮やかな作品だ。モチーフは最初から決めていたわけではなく、5つの輪を中心にぐっと引き寄せる「おもてなし」の発想から、このデザインにたどり着いたという。
もっとも桜を使ったデザインは家紋を例に代表されるように日本に古くからあるもの。梅野さんはこの点に言及しながら「パクリですw」と皮肉を交えてつぶやいている。
作品は評判となり、「日本の心がよくでてる」「万華鏡みたいできれい」「これにしよう!」といった声が続々と寄せられた。リツイート数は21日までに2万3000回以上にものぼっている。
2人目はスペイン在住の日本人グラフィックデザイナー、かんかんさん。17日に「扇」をモチーフにした自作エンブレムをツイッターで公開した。
扇を採用した理由は、「末広がりで縁起がいいものとされ、古くから応援するときの道具として使われてきたので、オリンピックのモチーフとして最適&『和』も感じられていいかなと」思ったから。「多くの人で支えられている日本(日の丸)」を扇の中で表現したという。
また、世界中の歴代五輪ロゴと並んだ時に日本だとすぐに分かることも目指したそうだ。
デザイン披露は「ドンヨリムードを変えたいだけ」
こちらのデザインも「粋なデザイン!クールジャパン!扇子だけにナイスセンス!」「日本らしさがあり、雅でいいですね」と大好評で、21日時点で16000回以上リツイートされている。もともとは勉強を兼ねて作ったというかんかんさんだが、あまりの反響の多さに驚きを隠せない様子だ。
ただ一部からは、クリエイター達が独自案を披露することに対して「売名」「侮辱」といったネガティブな見方も。かんかんさんはこうした意見を受けてか、
「彼を貶めるためにいろんな人がデザインを披露してるわけじゃない。そんな汚い心じゃデザインはできないよ...みんな、何かを変えたいと思ってるだけ。このドンヨリムードを変えたいだけ。世界のお祭に日本が選ばれたんだから」(20日ツイート)
との反論を寄せている。
同じ思いは俳優の田辺誠一さん(46)も抱いているようだ。田辺さんは18日、「色々と話題になっているので、デザインの練習でオリンピックのマークを考えてみました」として、日の丸や五輪を使った自作エンブレムをツイッターで公開した。
日頃から味わい深いイラストで人気を博している「画伯」のまさかの挑戦に、インターネット上では驚きの声とともに称賛の声が相次いだ。
ところが田辺さんは反響を喜ぶ一方で「プロの方などに失礼になる場合もある」として画像の削除を予告。実際に削除してしまった。
ただ、予告時には「あの画像に込めた色んな思いが伝わって嬉しいです。平和の祭典が東京で行われるのは本当にすごいです!」とコメントし、東京五輪の成功を願った。