「驚きの復活劇」を期待
ランエボとインプレッサの筑波タイムアタックは熾烈な競争だった。CARトップ誌の歴代ベストタイムはインプレッサWRX-STIスペックC(GDB)が1分4秒17、ランサー・エボリューションⅧMR RSが1分4秒40。これに対し、ドライバー誌はランエボⅧRSが1分3秒633で、インプレッサWRX-STIスペックC(GDB)の1分3秒920をわずかにリードしている。
両車のタイムはほぼ互角だったが、2000年代前半がピークだったタイム争いの現場では、三菱自動車と富士重工業(スバル)のエンジニアはもちろんのこと、両車をテストする自動車雑誌やレーシングドライバーの間でも「競争」があったと、『ドライバー』9月号は「裏話」を伝えている。
「早朝に群馬(スバル)や岡崎(三菱)からアタック用のクルマが直送されることもあった。技術陣やメカニックと大量の交換パーツ付きで。これからレースの雰囲気だった」
「メーカーの人もタイムを測っていて、タイヤの空気圧調整やらのメンテナンスをした後、『もっとタイムは出ますか』『もうちょっと行けますよね!』と肩を押されることさえあった」
「事前に筑波でテストしているので、どれだけのタイムが出るかメーカー側はわかっていた。それほど専門誌に載る筑波タイムの意味は大きかった」という。
いずれにせよ、ランエボとインプレッサは「毎年のように進化を続けて世界最強スペックに到達した」(『CARトップ』7月号)。これについては「お互いにライバルが存在し、切磋琢磨したから世界の頂点に立つことができた」と、両社の開発陣も認めている。
ライバルのインプレッサは「スバルWRX」となったが、問題はランエボ亡き後のスバルだろう。国内でライバルを失った最近のスバルは「BRZやWRXのベンチマークはポルシェ」と公言している。「でも、またいつかスバルと三菱の対決をどこかで見たい」というファンは多い。「ファイナルエディションの後に驚きの復活劇があると期待したい。三菱の経営が立ち直れば、あり得ない話ではない」(『ドライバー』9月号)との期待は、今なお根強い。