応援する自治体に寄付できる「ふるさと納税」制度で、長野県安曇野市に寄付された金額が2015年4月から7月までの4か月間で、3億4000万円近くになった。これは前年度1年間の65倍以上という数字だ。
「ふるさと納税」では、自治体が寄付した人に地元の特産品などのお礼の品を用意している例が多い。安曇野市が15年6月からVAIOのノートパソコンの提供を始めたところ、寄付する人が殺到したのだという。
すぐに「完売」、受け付けを一時休止
安曇野市はこれまで日本酒や、ワカサギの空揚げ、甘露煮といったお礼の品を用意していたが、今年が市制施行10周年に当たるため「ふるさと納税」を盛り上げようと新たに20品目を追加した。その一つが15年6月から始めたVAIO社製のノートパソコン2種類の提供で、30万円寄付すれば19万円相当の「VAIO Z(オフィスなし)」、40万円寄付すれば25万円相当の「VAIO Z(オフィスあり)」がもらえる。
VAIO社はソニーのパソコン事業を分社化し発足した。現在は同市に本社と開発製造拠点がある。贈られるパソコンは特別仕様のロゴと刻印が入る。
このVAIOのお礼を加えたところ申し込みが殺到し、6日夜から7日にかけて170件の申し込みが集中し、7日の正午から受け付けを一時休止せざるを得なくなった。7月21日には350台を追加し寄付を募ると、午前0時開始から同9時までに「完売」した。
VAIO効果がどれほどになったかというと、14年度1年間の寄付は211件で総額516万2000円だったのに対し、15年度は7月29日までに寄付が1655件で総額が3億3946万7200円。寄付件数は約8倍で、総額は65倍以上に。VAIOのノートパソコンはトータルで900台出て、生産が追い付かないなどの理由から7月21日の時点で申し込みの受付を休止している。
来年度以降もVAIO続く可能性
「ふるさと納税」を担当している市の総務課に話を聞いてみると、寄付してくれる人が増えた理由は、15年4月1日から税制改正が行われ寄付に伴う住民税の還付、控除額が増えたことと、ネットでの申し込みやクレジットカードでの支払いを可能にしたため「ふるさと納税」が身近なものになったからではないか、と説明した。その上でVAIOはまさに市の「特産品」のような存在として認知されていることが分かった、とし、
「VAIOには根強いファンがたくさんいて、安曇野で生産したVAIOに安曇野の特別仕様の刻印が押されているということが魅力だと受け止めておられるようです」
と話している。
市ではできるだけ早期に受付を再開したい考えだ。VAIOの提供は市制施行10周年を記念して企画されたものだが、2016年度以降も続いていく可能性があるという。