羽田空港はANAが6割に
債権者集会直前に急きょまとめられたデルタ支援案が、スカイマークなどとの協議を経ておらず「生煮え」状態だったことも、債権者に「実現性に難がある」(取引業者)との疑念を抱かせ、ANA支援案に票が流れる要因となった。デルタの森本大・日本支社長は集会後の記者会見で「スタートが遅かった」と悔しさをにじませた。
ANAは今後、スカイマークに16.5%を出資するほか、役員も派遣し、共同運航や機体整備支援を通じて再建を急ぐ。スカイマークが事実上、ANAグループの一員になることで、羽田空港発着の国内線に占めるANAグループのシェアは6割に達する。
長峯取締役は「スカイマークの運賃設定には関与しない」と改めて表明。スカイマークの井手隆司会長も「大手のような運賃では顧客は離れる。これくらいの(安い)運賃でないと乗らないという市場をしっかり押さえる」と従来の低価格戦略を維持する方針を強調した。
だが、業界関係者の間では「これまでのような激しい価格競争は回避され、スカイマークの運賃は上がる」との見方が大勢だ。低価格にひかれてスカイマークを利用していた顧客が離れるリスクもある。
航空行政のあり方も問われそうだ。ANA、日本航空に次ぐ「第3極」の新興航空会社を育て、競争を促す政策は完全に頓挫した形だが、太田昭宏国土交通相は8月7日の記者会見で「再生計画案では(スカイマークの)独立性を維持すると明記されている。引き続き注視し、適切に指導したい」と述べるにとどまった。
与党内では民主党政権時代に公的支援を受けて再生した日本航空への反発が強く、ANAびいきが多いため、「国交省もANAの勢力拡大に関して何も言えない」(関係者)のが実態のようだ。スカイマークが独自性を維持しつつ再建を果たせるのかが注目される。