テレビ通販「ショップジャパン」を運営するオークローンマーケティング(本社・名古屋市)が、この秋から同性のパートナーがいる社員に結婚祝いなど慶弔金の支給や結婚休暇の付与を決めた。
性的少数者(LGBT)に対するこうした取り組みは外資系の日本法人が先行しているが、最近は地方自治体に同性カップルのパートナー関係を認める証明書を発行するなどの動きも目立ち始めている。これに呼応し日本企業にも支援の動きがどこまで広がるか、注目される。
人材確保につながる可能性
オークローンマーケティングは地方自治体が出す証明書などで同性カップルと証明された社員に対し、異性カップルと同じように1万~3万円の結婚祝い金を支給し、6日間の結婚休暇も与える。パートナーが社内外かは問わない。この慶弔規定の見直しは社員の提案がきっかけだったという。
オークローンマーケティングには「世界中でより豊かなライフスタイルを実現する」という同社のビジョンにひかれ、多様な国籍・文化・バックグラウンドを持つ社員が集まっているという自負がある。慶弔規定の見直しも「性別や人種などで線引きするのでなく、社員1人1人が能力を最大限発揮し、輝けるよう、ダイバーシティを推進」(オークローンマーケティング)してきた延長上での決断だったという。
ダイバーシティといえば「多様性」という意味だが、ビジネスの場面では社員の多様性(性別、人種、国籍、宗教など)を活用することで、激しく変化する経営環境に対応し、競争力を高めるという意味で使われている。企業にとってはダイバーシティの推進は社会的責任を果たしていることのアピールにもなり、人材確保につながる可能性もあるため、国内でも取り組みが盛んになっている。
渋谷区に続いて世田谷区も
同性パートナーについては、欧米では同性婚を認めるなど理解が進んでいる。日本国内でもイギリスの化粧品会社の日本法人「ラッシュジャパン」(本社・神奈川県愛川町)が同性のパートナーを届け出れば、祝い金や結婚休暇、介護休暇を取れるようにしており、待遇面でも外資系が先行している。
オークローンマーケティングでも、「同性カップルの証明書」が祝い金などの条件になっている。これをめぐっては、4月に同性パートナーシップ条例を施行した東京都渋谷区が今秋から発行し、これに世田谷区も続く予定だ。とはいえ、これ以外に目立った動きはないようで、証明書発行の動きが広がらなければ、企業の制度見直しも停滞する可能性がある。当面、自治体の動きが大きなカギを握りそうだ。