商社大手の2015年4~6月期連結決算に異変が生じた。
従来は純利益の多い順に三菱商事、三井物産の旧財閥系がトップグループの位置を占めてきたが、伊藤忠商事が首位に立った。資源安の局面で非資源ビジネスに強い特徴が生きた格好だ。
三菱商事はサケ事業が誤算
商社の業績は現在、純利益で比較することが多い。他の業界と違って売上高があまり大きな意味を持たないからだ。「海外で資源を買って国内で売る」といった、卸売り業者のような事業が大半だったかつてなら、売上高もある程度意味があった。しかし現在では「投資した事業から配当などを回収する」など米国型投資銀行のようなビジネスが重きをなしつつあるからだ。
では4~6月期に何が起きたのか。まず商社の雄、三菱商事を見てみよう。
三菱商事の4~6月期連結決算の純利益は、前年同期比31.9%減の749億円にとどまった。従来の主力である資源分野の低迷が響いた。資源安は昨年秋以降、続いている現象だ。このため、株式市場では商社の業績への影響もある程度織り込まれていたはずだが、予想を超えた減益だったため、8月4日の発表直後には株価が一時前日終値比8%安(終値も同7%安)と売り込まれた。
純利益の内容を具体的に見ると、資源分野が7割減と大きく落ち込む一方、非資源分野も1割減と低迷した。原油や鉄鉱石といった資源ビジネスは世界的な需給や政治の動向の影響を受けて価格変動が激しい。資源安局面もあれば資源高の局面も訪れる。最近の原油市場は、中国経済の減速懸念とイランの増産観測によって下落基調を強めている。
こうした資源安の際は、非資源分野の奮起に期待したいところだが、三菱商事の4~6月には、非資源分野でサケ事業の採算が悪化したことが誤算だった。買収したノルウェーのサケ養殖・加工大手企業が、サケ価格の下落などで業績不振に陥った。
三菱商事と業績を競い合ってきた三井物産も、4~6月期は純利益が前年同期比24.2%減の969億円にとどまった。資源ビジネスへの傾斜度が高いため、原油や鉄鉱石の価格低迷の影響をもろにかぶった形だ。中国の動画配信事業や東京都内のビルの売却益などでも補えなかった。
ただ、三菱商事と違って市場は好反応。減益幅は予想より小さいとして株価は上昇し、8月6日の発表日の終値は前日比4%高。「エネルギー部門の7割減益」が想定の範囲内に収まった一方、非資源分野の飼料関連米子会社の利益が増えたことなどを好感したようだ。とはいえ、非資源分野が資源の不振を十分補えるにはいたっていないことも、改めて明らかになった事実だ。