あえて新興チームへの入団望む
岩隈は見るからにヤサ男である。身長が高くスリム。マリナーズのユニホームがチームで最も似合う。
ニックネームがいい。
「浪華(なにわ)のプリンス」(近鉄時代)
「杜(もり)の貴公子」(楽天時代)
前者は大阪の別称から、後者は仙台が杜の都と呼ばれるところから、そう呼ばれた。
ところが実像は「男気」の野球人である。
その代表的なエピソードは、近鉄が球団を解散、その後の進路を決めるときのこと。近鉄の選手はオリックスに吸収されることになり、選択優先権を持つオリックスの保有となった。
それを岩隈は蹴った。
「岩隈は新興チームの楽天入団を望んだ。楽天に振り当てられた近鉄の選手はほとんどが主力以外。楽天が弱小であることは目に見えていた。岩隈はそれを承知で楽天入りした。オレが支える、という気持ちだった」
当時の近鉄担当メディアの話だ。
オリックスは岩隈の強い決意に説得をあきらめ、金銭トレードの形で楽天に譲ったという」いきさつがある。
10年オフ、大リーグ挑戦へ。ポスティングシステムで交渉権を取ったアスレチックスの「4年、約1500万ドル」を蹴り、翌年に海外FA権の資格を取ってマリナーズと契約した。
岩隈は、大リーグならどこでも、という選手ではなかった。
マリナーズでは岩隈を「岩熊」として「Rock Bear」と呼ばれ、大リーガーたちは岩隈の男っぽさを知っているのだ。
(敬称略 スポーツジャーナリスト・菅谷 齊)