マリナーズの岩隈久志が2015年8月12日のオリオールズ戦で達成したノーヒットノーランは教科書のようなピッチングだった。
このヤサ男には、実は「男気」が支えになっていた。
9回になってから「その気になった」
快記録のポイントは投球数116球にあった。つまりコントロールの良さと組み立ての巧さである。1イニング13球平均。力投型の投手なら6イニングで到達する数だ。
「(捕手が)何を求めてサインを出しているのかが分かって投げることができたと思う」
ここぞというカウントでボール球を振らせることに成功した。ボール球を振らせる割合は40%を超えた。凡打の山を築き、岩隈本来の無駄のないピッチングができた。
それでも記録達成は9回になってから「その気になった」という。
「9回になって三塁手がファウルフライを捕ってアウトになったとき、ここは(快記録を)狙っていかなけりゃならないという気持ちになった」
ノーヒットに抑えていても、岩隈には球数の壁があった。100球めどである。8回を終わったところで交代、あとはクローザーに、との気持ちがあったそうである。
岩隈は球数にシビアである。これは日本の楽天で投げているとき、故障をして右ヒジを手術した苦い体験をしているからで、無理はしないと心に決めているからだ。