なお続くイバラの道
とはいえ、海外戦略の焦点は必然的にアジアということになる。主要先進国での生産から撤退する一方、アジアで攻勢を強めているのだ。アジアは同社の世界販売台数の3割を占め、米国の2倍の規模に達する主力市場。今年1月にはフィリピンの新工場(生産能力は年5万台)で生産を開始。2月末には、インドネシアに新工場(同16万台)を建設し、2017年4月に操業を開始すると発表するなど、矢継ぎ早に手を打っている。
ただ、先行きは楽観を許さない。日本の自動車メーカーで、アジア進出の優等生と言えばスズキで、インドで不動のトップシェアを握る。これに対して三菱自は、同社としてはアジアの比率が高いとはいえ、他のメーカーと比べると、いかにも力不足だ。直近の国別シェアでは、例えばインドネシア(1~6月)ではトヨタ、ダイハツ、ホンダ、スズキの後塵を拝して日本勢で5位(シェア11.5%)、タイ(同)もトヨタ、ホンダ、いすゞ、日産に次いで5位(同6.4%)など、出遅れている。
世界販売台数で独フォルクスワーゲン(VW)と首位争いを演じるトヨタ自動車を筆頭に、大手メーカーが先進国、新興国で幅広く生産・販売拠点を設けているのに対し、中堅メーカーでは、米国で独自のブランド力を誇る富士重工業など、より強みを発揮できる市場に経営資源を集中投下する傾向が強まっている。
研究開発に莫大な金額がかかる電気自動車、ハイブリッド車、燃料電池車など次世代の環境技術と同様、生産・販売エリアで「選択と集中」をどう進めていくかが生き残りのカギを握っているが、インドにおけるスズキのような優勢地域・国がない三菱自にとって、いばらの道が続きそうだ。