電力販売完全自由化が引き金になるか
石油元売りは高度成長期には10社以上あったが、ガソリンなどの価格競争の激化や国際石油資本(メジャー)の集約化の流れなどを背景に、国内で経営統合など再編が進み、今回の出光・昭シェルの統合で4社に集約される。このため、現在、規模で出光と昭シェルに挟まれる東燃ゼネラル石油(売上高約3兆5000億円)とコスモ石油(同約3兆円)の動向が今後の注目点になる。
特にコスモ石油は、2011年の東日本大震災に伴う千葉製油所の爆発事故で財務が悪化したころから、今年10月に持ち株会社体制に移行し、石油精製、開発、販売の3部門を分社化してぶら下げる。各部門の収益を明確にし、事業展開のスピードアップを図るというが、「業界再編に向けてM&Aも含め他社と連携しやすくする狙い」(業界関係者)との観測も出る。
東燃ゼネはかつて米メジャーのエクソンモービルが株式の約50%を握る筆頭株主だったが、今は10%以下に落ちて、後ろ盾がない。他社との提携を模索しているが、いまのところ目立った動きはない。
今後の注目点の一つは、電力事業を巡る動きだ。出光は九州電力や東京ガスと組んで千葉県袖ケ浦市に石炭火力発電所を建設する計画を打ち出している。昭シェルも東京ガスと横浜市に液化天然ガス(LNG)火力発電所を建設中だ。
2016年4月の電力販売完全自由化さをにらみ、電力事業を新たな収益源にしたい石油元売り大手と販売エリアの拡大(他の電力のエリアでの事業拡大)を目指す電力各社、電力事業の本格展開を急ぐガス大手。3者の距離は接近し、新たな連携が生まれる可能性もあり、元売りの再編にも影響を与える可能性がある。