ベトナムも「実質切り下げ」に踏み切る
こうした連日の人民元の切り下げに、通貨安競争の激化が懸念されている。実際に、ベトナム中央銀行は中国の人民元切り下げを受けて、2015年8月12日に通貨「ドン」のドルに対する変動幅を、これまでの1%から2%に拡大すると発表した。
ニッセイ基礎研究所経済研究部のシニアエコノミスト、上野剛志氏は「実質的な下げですね」とし、「人民元の切り下げがいまの程度で終われば(通貨安競争の)懸念はないでしょうが、中国政府の最終目標がもう1段下の水準となると話は別です」と指摘。中国経済の下振れによって、より持続的に人民元が安値に誘導されれば、東南アジアなどの周辺国をはじめ、元安に対抗するリスクは高まってくるという。
そうなると、結果的に輸出先の経済が悪化して輸出が伸び悩み、自国の経済は浮揚せず、いくら下げても効果が上がらない可能性もあるわけだ。
ニッセイ基礎研究所の上野氏は「いま、世界で調子(景気)のいい国なんてないんです。そうした中で、どこかが通貨安にすると、どこかが通貨高を引き受けなければならないわけで、それを押しつけあっている状況なわけです」と説く。
通貨高を「押しつけられている」のは米国(ドル)だ。上野氏は「元安が進むことで米国経済に影響が出るのが一番イヤですね」という。
アベノミクスのシナリオが大きく崩れる心配もあり、日本経済にも深刻な影響をもたらすことになる。