中国人民銀行(中央銀行)が3日連続で、人民元の対ドルレートの基準値を大幅に切り下げた。
中国の景気減速が深刻化していることが背景にあるとみられているが、連日の切り下げは、通貨安競争を煽っているかのようでもある。
利下げは景気回復への「起死回生」
中国の元安誘導が加速している。中国人民銀行は2015年8月13日朝、前日の基準値(1ドル=6.3306元)に比べて1.11%切り下げ、1ドル=6.4010元とした。3日連続の切り下げ幅は、基準値ベースの合計で4.65%の元安ドル高だ。
人民元は毎朝、プラス・マイナス2%の幅で基準値を見直している。そうした中で、米国は対米黒字を抱える中国政府に対して、これまで元高を再三のように求めてきた。そんな米中関係もあって、人民元の実勢レートは基準値よりも高めで推移。連日の下げは、それを「市場の実勢レートに近づけるため」と、中国人民銀行は説明している。
人民元の切り下げについて、第一生命経済研究所経済調査部の主席エコノミスト、西濱徹氏は「中国の足もとの経済指標は減速を示しており、経済のけん引役として期待する内需の弱さが続くなか、人民元安によって外需の喚起を図ろうとしたと考えられます」と説明。「その意味において、人民元の切り下げは景気回復に向けた、『起死回生』を図る狙いがあるといえます」とみている。
たしかに、中国の実体経済は想像以上に悪化しつつあるようだ。中国・国家統計局が8月12日に発表した鉱工業生産などの経済指標は軒並み鈍化。国内の消費動向を示す7月の小売り売上高は10.5%増だったが、前月からは0.1ポイントの下落。2ケタ成長は維持したものの、2014年7月は12.2%増だった。15年に入り急落している。
また、中国の製造業の生産実態などを示す7月の鉱工業生産は前年同月比6.0%増だが、やはり前月からは0.8ポイント低下。国家統計局はその最大の原因に、「輸出不振」をあげている。輸出増強による景気回復は、中国にとって喫緊の課題というわけだ。
その一方で、中国政府は経済成長を低めに抑えながら、痛みを伴う経済構造改革を先行させる「新常態」路線に踏み切った。その矢先に実体経済が激しく落ち込んだことで、景気回復策を打たざるを得ない事態に追い込まれたとの指摘もある。
連日の切り下げは、中国政府の焦りとの見方も少なくない。