鳩山由紀夫元首相の訪問先の行動で、「また国益を損ねた」という批判が出ることになりそうだ。韓国・ソウル市内で「抗日の象徴」ともされる施設の記念碑の前で独立運動家を称賛したうえ、靴を脱いでひざまずき、手を合わせるという土下座にも見える仕草をしたからだ。
韓国メディアによると、総じてSNS上の反応は好意的だ。ただ、その中には「安倍も見習え」というものもあり、鳩山氏の行動が結果として謝罪要求を勢いづかせた形になっている。
ゲストブックには「万歳運動に尽力された全ての魂の安らかならんことを」
鳩山氏が2015年8月12日に訪問したのは、ソウルの西大門刑務所の跡地。抗日活動家が収監されていたことから、「抗日の象徴」として知られている。鳩山氏は刑務所の歴史を伝える資料館を約40分かけて見学し、独立運動などを伝える展示物の前で「11回頭を下げた」(聯合ニュース)といい、ゲストブックには、
「万歳運動に尽力された全ての魂の安らかならんことを願い 独立・平和・人権・友愛」
と記した。
その後、鳩山氏は資料館の前にある記念碑に献花し、靴を脱いでひざまずき、合掌するような仕草をして両手を地面につき、深々と頭を下げた。鳩山氏は記者団に対して
「多くの皆様方をここに収容して、拷問という大変ひどい刑を与え、心から申し訳ない」
「この刑務所の中でも万歳を叫んで万歳(マンセー)運動を行っていたということには心から敬意を表したい」
などと独立運動をたたえ、運動家を日本政府が収監したことを謝罪した。
「クンジョル」と呼ばれる最も丁寧なお辞儀だという説も
一連の仕草は、「土下座」に見える半面、「クンジョル」と呼ばれる、膝をついて行うスタイルの最も丁寧なお辞儀だという指摘もある。大半の韓国メディアは、
「膝を屈したまま10秒間目を閉じて両手を合わせた」(ハンギョレ新聞)
「ひざまずいて黙祷をした」(朝鮮日報)
などと報じており、「土下座」か「クンジョル」なのかは明確な判断は示していない。いずれにしても、鳩山氏が刑務所に収容されていた独立運動家に最大限の敬意を示したことは間違いない。
翌8月13日朝には、聯合ニュースが鳩山氏の行動をめぐり「SNSは熱い反応が続いた」として、ポータルサイト「ネイバー」上の発言を紹介している。紹介された発言の大半が
「すごい勇気」
「感激している」
「心がこもった謝罪、ありがとうございました」
といった好意的なものだが、
「安倍は見習え」
「現首相に正式に謝罪してほしい」
などと日本側にさらに対応を求めるものもあった。この聯合ニュースの記事では、安倍首相は「歴史歪曲の先頭に立つ」という枕詞つきで紹介されていた。
鳩山氏は8月13日には国際会議に出席し、「日本が軍事大国になることは歓迎されない」などとする宣言を韓国の李洪九(イ・ホング)元首相とともに発表した。