中国の景気動向が金価格に影響
金価格は2012年、1700ドル前後にとどまっていたが、2013年には一時1200ドルを割り込むまでに下落した。背景には、米国の量的金融緩和政策(QE3)の終焉が見えたことがある。当時、米連邦準備制度理事会(FRB)のバーナンキ議長がQE3の縮小と終了の見通しを示唆し、その後は実際にその通り動いた。米国がリーマン・ショック以来続いた危機を脱する道筋がついたことで、それまでの「ドル売り・金買い」の流れが逆回転を始めたわけだ。
年を追うごとに顕在化する中国経済の減速懸念も金価格を押し下げる。金の消費需要は年間1000トン近い中国が世界首位で800トン超のインドが2位。3位以下は100トン台に過ぎない。中国の景気動向が金価格に影響を与えないわけがない。
中国経済の減速は原油など他の商品価格にも影響を及ぼしており、代表的な商品指数であるロイター・コアコモディティCRB指数は、8月に入って200を割り込み、2008年のリーマン・ショック時を下回って12年ぶりの安値圏にある。
そうした下地があるところに、今年7月の金価格急落の直接の引き金になったのが、「手遅れになるなら年内の利上げ着手が適切」とのイエレンFRB議長の議会証言での発言だ。確定的なことを言ったわけではないが、利上げでドルの金利が上昇するなら、持っていても金利ゼロの金を持つ意味は薄れる。
7月末にニューヨーク金先物は一時、1トロイオンス=1100ドルを割り込み、5年半ぶりの安値となった。8月に入っても本格反転の兆しは見えない。歩調を合わせるように6月には1グラム=4700円を超える日もあった東京金先物も、7月下旬には4200円台に下落した。金保有者にとっては悩ましい日々が続きそうだ。