与党の一角を占める公明党と関係が深いはずの創価大学(東京都八王子市)の関係者からも、公然と安全保障関連法案に反対する声が上がり始めた。安保法案は創立者の池田大作・創価学会名誉会長の思想とは相容れないというのがその理由で、現役学生や教員、卒業生を対象にした署名サイトが開設された。
世論調査の政党別支持率では、自民党よりも公明党の方が下げ幅の方が大きいケースも出てきている。支持母体の創価学会は、集団的自衛権を行使するためには本来ならば憲法改正が必要だという立場だ。この立場と法案との整合性を取ることは難しいとみられ、学会員が公明党に距離を置きつつある実態が明らかになっている。
創価学会広報室、集団的自衛権行使は「本来、憲法改正手続きを経るべき」
署名サイトは「安全保障関連法案に反対する創価大学・創価女子短期大学関係者有志の会」を名乗る団体が2015年8月11日に立ち上げた。教員や卒業生10人が呼びかけ人になり、
「現在9割の憲法学者が『違憲』と判断している安全保障関連法案が、安倍政権により採決されようしています。私たちはガンジー、キングの人権闘争の流れに連なる創立者・池田大作先生の人間主義思想を社会に実現すべく学び続けてきました。そこで培った人権意識を持つ者なら、声を上げるべき時は、今です」
「私たち関係者有志は、創立者・池田大作先生の理念を我が人生の根幹に据え、安全保障関連法案への『反対』を表明します」
などと法案反対の署名を呼びかけている。サイトによると、8月12日時点で現役学生や卒業生410人が署名を寄せたという。
そもそも、創価学会の立場と法案の内容は相容れないものだ。創価学会は14年5月に朝日新聞から集団的自衛権について見解を求められ、広報室名で、
「私どもの集団的自衛権に関する基本的な考え方は、これまで積み上げられてきた憲法第9条についての政府見解を支持しております。したがって、集団的自衛権を限定的にせよ行使するという場合には、本来、憲法改正手続きを経るべきであると思っております」
という内容のコメントを発表している。「本来」という言葉を入れることで、憲法解釈の変更による集団的自衛権行使容認に含みを残したともとれるが、基本的には解釈改憲には否定的な立場だ。そういったこともあって、学会内からは公明党の立ち位置に違和感を唱える声が広がっている。