東京の新宿プリンスホテルで起こった、レストランのランチブッフェの料理から銀歯が見つかった問題で、ホテル側は調理担当者全員を歯科医が検査するなど徹底究明につとめたが、原因を特定できなかったことを明らかにした。
外食チェーンなどの料理から異物の混入するケースが後を絶たず、「またか」と思わせたものの、どうやら「大山鳴動してネズミ一匹も出ず」といったところだ。
納品元でも「混入は考えられない」
問題が起こったのは2015年7月22日11時45分ごろ。新宿プリンスホテルのランチブッフェで提供されていた「牛肉のトマト煮込み カレー風味」を食べた男性客から申し出があった。
料理はランチブッフェ用の保温什器に、小さな取り皿で約20人分の量が入れられていた。男性客が取り分けて、口に入れたところ、「銀歯」のような異物に気付いたという。指摘を受けて、ホテル側はこの料理の提供をすぐに中止した。
調理された料理が出されていたのは、オープンからおよそ30分で、「当日は6~8人ほどのお客様が食べたようです」(親会社の西武ホールディングス)としている。ただ、この男性客以外に異物が混ざっている被害はなかった。
新宿プリンスホテルでは、この時間帯に同じメニューを食べたお客に対して、申し出があれば、利用状況を確認したうえで代金を返金。ホテル側は、「お客様をはじめ、関係の皆様にご迷惑をおかけしたことをお詫び申し上げます」としている。
西武ホールディングスによると、「その後、とくに健康被害は確認されていません」と話し、7月27日までに異物混入の指摘はなかった。
とはいえ、料理に銀歯が混入していたとなれば、ホテルの信用に傷がつく。昨今は異物混入事件が相次いでいることもあり、外食チェーンやホテルなどは神経質になっているのだろうが、新宿プリンスホテルでは、かなり徹底して調査したようだ。
ホテル側は新宿区保健所への報告とともに、保健所に調理場と調理工程について確認してもらったところ、「特段の指摘もありませんでした」との結果を得た。また、使用した食材の納品元にも、銀歯の混入の可能性を調査したところ、納品元でも製造工程に金属探知機などを備えているため、混入は考えられないとの回答を得ている。
さらに、従業員には当日の聞き取り調査のほか、調理担当者をはじめ調理場に入室する担当者、31人全員が歯科医による義歯の検査を行ったが、全員が「関係ない」との報告を受けた。
西武ホールディングスは「以前から、調理担当者らは制服に着替えた段階で私物を調理場に持ち込むことができないようになっています」とも説明。こうした調査結果から、銀歯がホテルの従業員のものではないことは確認されたものの、混入の経路や原因の特定はできなかった。