タイ・バンコクは湿度90%を超す、ムシムシとした熱帯夜だった。テレビ朝日バンコク支局長(40代男性)は異国の暑さを紛らわすためか、酒をあおっていた。日本から「テレ朝」の看板を背負い、ちょうど2週間前この地を踏んだばかり。2015年7月27日、すでに時刻は深夜0時に近い。
酔っての悪ノリか、海外での新生活でテンションが上がっていたのか。彼はろくでもないことを思いついた。自分の局部の写真を、ある親しい女性に送りつけようというのである。さっそくズボンを脱ぎ、露出したそれを右手で握り立たせ、手持ちのスマートフォンでぱしゃりと撮った。後は、そのままLINEで送信、と――。
丸出し写真に「オエー」
次の瞬間、彼は真っ青になったに違いない。なにしろその写真が彼女宛てではなく、つい先日加入したばかりの「タイ外務省のLINEグループ」に投稿されてしまっていたのだから。
8月1日、メディアが一斉に伝えた「テレ朝支局長丸出しLINE事件」は、だいたい上記のような顛末である。
誤送信するにも、場所が悪かった。そのグループは、外務省が外国メディア向けに設けたもので、現地に駐在する外国人記者など150人あまりが参加、まさにスポークスマンとのやりとりの真っ最中だ。そんな真面目な場に、「チン写真」が突如飛び込んできたのである。
LINEへの投稿は取り消すことができない。支局長はよほど慌てたのか、釈明1つせずに直後、グループから逃げるように退出した。間もなくスポークスマンから、
「このLINEグループは、公的な目的のために設けているものです。対応を取らせていただきます」
とのコメントが付く。続けて、別の参加者がキャラクター物のスタンプを貼り付けた。「オエー」と嘔吐している画像だ。
「大きくはないね」と「サイズ」をからかう
このやり取り自体は非公開だったものの、グループに参加していた記者経由でスクリーンショット画像はあっという間に拡散し、タイのメディアも相次いで報じる事態となった。
反響は大きく、たとえば現地のニュースサイト「M Thai」では、アクセスランキングの4位にこのニュースが入っている。タイで最も人気があるポータルサイト「サヌック」に配信された記事にいたっては、フェイスブックで1万人以上から「いいね!」された(いずれも2日午後時点)。下手をすれば国際問題にもなりかねないような話だが、幸いというべきかコメント欄などを見る限り、「大きくはないね」などと「サイズ」をからかうなど、いわゆるお笑いニュースとして受け取っている人が多いようだ。また、
「政府の干渉への、遠回しな抗議だったのではないか?」(ニュースサイト「ココナッツ・バンコク」)
といった、うがった見方まで出ている。
なお報道によれば、テレビ朝日はこの一件をタイ外務省へすでに謝罪しており、支局長は謹慎中だという。