いまや日本人の国民食といっても過言ではない「ラーメン」。その消費量日本一は、そばどころの山形県らしい。
ラーメンの激戦区といえば、全国各地からさまざまなご当地ラーメンが集まってくる東京だとばかり思っている人は少なくないかもしれないが、そうではないのだ。
全国平均の2倍超
総務省の家計調査によると、1世帯(2人以上世帯)あたりの「中華そば」の外食にかける年間支出金額(2012~14年の平均値、都道府県庁所在地・政令指定都市の51都市を集計)が日本一なのは、山形市で1万3424円だった。
次いで、福島市の1万1577円。以下、宇都宮市の1万176円、仙台市の1万42円、盛岡市の9427円と続く。
ちなみに、全国の平均支出は5548円。とんこつの「博多ラーメン」が有名な福岡市は6340円で20位だったが、「札幌ラーメン」の札幌市は25位(5543円)で、わずかに全国平均に及ばず。数多くのラーメン店がしのぎを削る東京都(23区)は4987円で31位、「横浜ラーメン」の横浜市は39位(4180円)。なんと「和歌山ラーメン」の和歌山市は3047円で最下位だった。
全体的に、北海道や東北を中心に東日本が目立ち、西日本は振るわない。「中華そば」の支出は東高西低といえそうだ。
一方、NTTタウンページデータベースによると、人口10万人あたりのラーメン店件数は山形県が42.26件(2015年調査)でトップ。じつに、10年連続で君臨する。2位は新潟県の32.51件、3位が「佐野ラーメン」が有名な栃木県の30.40件だった。
また、山形県はラーメン店の数だけでなく、ご当地ラーメンも多い。南陽市の「赤場ラーメン」は、太い縮れ麺に味噌ベースのスープに唐辛子入りの辛味噌を溶かして食べる。天童市の「鳥中華」は、鳥そばの麺がラーメンに変わったもの。「酒田ラーメン」は、豚骨と鶏ガラ、昆布、煮干しを使った醤油ラーメン。「米沢ラーメン」は、細い縮れ麺に、野菜と鶏ガラ、煮干しのあっさり醤油味。新庄市の「とりもつラーメン」は、鶏ガラ醤油スープの縮れ麺で、鶏モツの煮込み入り。
麺もスープも冷たい、山形市の「冷やしラーメン」もその一つ。「冷やし中華とはまったく違います。麺もスープも温かいラーメンと同じなのに冷たくて、おいしい。氷が入っている店もあります」と、山形県の広報担当者は説明する。
「冷やしラーメン」の存在が、夏でも消費量が落ちない原因ともいわれる。
仲間とワイワイガヤガヤ食べる
そもそも山形県といえば、そばどころ。山形市内でもおそば屋でラーメンを出している店が少なくない。メニューには「おそば」と「丼ぶり」に加えて、「ラーメン」が並んでいて、醤油スープに中華麺が入った、ラーメンではなく「中華そば」として供されているという。
「最近は専門店(ラーメン店)が増えていますし、食べに行くことが多いようですが、昔は家庭で出前をとってラーメンを食べることもあったようですよ」と話す。
インターネットには、
「やっぱり山形といえば、冷やしラーメン!うまいよな」
「蕎麦屋でラーメンは生活に深く浸透している」
「赤湯に住んでる。俺もこっちの出身じゃないけどラーメンのうまさには驚いたよ」
「中華そば、週3回かな。欠かせないwww」
などの、「おいしい」「好き」といった声が寄せられている。
ところで、山形で思い出されるグルメといえば、「芋煮」だろう。里芋やネギ、こんにゃく、肉などを入れて煮込んだ郷土料理。秋には、家族や友人が集まり河原でかまどをつくって鍋を囲む、「芋煮会」が開かれる。
スーパーなどでは芋煮会セットを貸し出しているほど。山形県の広報担当者は「家庭でもつくりますが、学校や職場などの仲間が河原でワイワイガヤガヤと食べることが多いですね」と話す。
ちなみに、山形県はこんにゃくの消費量も日本一。
2015年9月には、山形市馬見ヶ崎河川敷で「第27回 芋煮会フェスティバル」が開かれる。直径6メートルの「日本一」の大鍋で、重機を使って調理。3万食を用意する。
山形県を訪れた旅行客を対象に、楽天トラベルが行った「山形県を旅した人が選ぶ!山形県・旅めしランキング」調査によると、「芋煮」は242票を集めて堂々の第1位だった。
山形県民にとっては、どちらも捨てがたいようだ。