会長が社長を酷評
ただ、東芝の対応に対し、政府内や法令遵守の専門家の間で冷ややかな見方が多い。東芝は2003年、米国流の経営形態で社外取締役の権限を高めた「委員会等設置会社」にいち早く移行。企業投資の先進企業を自負してきたが、実際には経営トップらの暴走を止められなかったためだ。「形だけ社外取締役を増やしても意味がない」という指摘に、東芝側は反論できない状況に陥っている。
そもそも実態解明が不十分との指摘は根強い。社長経験者である西田氏が会長時代、当時の佐々木社長の経営手腕を社の内外で酷評し、同社の「利益至上主義」に拍車をかけたとの見方があるが、第三者委の報告書はトップ間の「確執」には切り込まず、「消化不良」との批判が出ている。
当時、西田氏は週刊誌上で佐々木氏を「利益を出しても日立に負けている」「売上目標を達成したことがない」と公然と批判していたのは有名な話だ。このため、政府内では「首脳間の確執まで踏み込んで利益水増しの原因を究明しなければ、再発防止を図るのは難しい」との声が上がっている。
利益水増しは東芝の主要事業全体で横行し、多くの関係者が不正会計に手を染めた。第三者委の報告書の発表と社長の引責辞任で一区切りはついたものの、問題の根は深く、まだまだ尾を引くのは間違いない。