2015年1~6月の自動車のグループ世界販売台数で、トヨタ自動車が独フォルクスワーゲン(VW)に小差で首位を明け渡した。トヨタの首位陥落は東日本大震災の影響を受けた2011年以来、4年ぶり。しかしVWも頼みの中国で苦戦しており、今後も中国市場全体に上昇の気配がない。一方でトヨタは海外が好調で、年間では首位を4年連続で確保する可能性が大いにある。年間の首位争いは混戦模様になりそうだ。
新型プリウスで挽回へ
トヨタが7月28日に発表した1~6月のグループ世界販売台数(ダイハツ工業と日野自動車を含む)は、前年同期比1.5%減の502万2000台だった。VWは0.5%減の504万台で約2万台とわずかの差で首位を奪った。かつての王者、米ゼネラル・モーターズ(GM)は1.2%減の486万台で3位だった。
僅差とは言え、トヨタが上半期に首位陥落した大きな要因は、国内市場の不振だ。2014年4月の消費増税による駆け込み需要の反動などの影響から脱していない。特にダイハツ工業は、2015年4月の軽自動車増税もあって大きく失速した。トヨタ本体は国内で1~6月に前年同期比8.7%減の76万3875台。ダイハツは13.4%減の33万1928台にとどまった。上半期の国内市場でシェア42%を占めたトヨタグループの実績は、市場の動きに連動する。国内需要の約4割を占める軽自動車の不振脱却には時間がかかりそうで、トヨタグループの販売台数にもジワリ響くとみられる。年内発売する新型プリウスでどれだけ挽回できるかもポイントになりそうだ。
その半面、トヨタグループの海外販売は1.2%増の389万6000台で上半期の過去最高を更新し、好調だ。とりわけ原油安で需要が増え、市場全体で4.4%増の852万台が売れた米国で、市場全体の成長率を上回る5%超の伸びを見せたことが大きい。また、これまでは負け組だった中国でも「カローラ」が好調で、10.1%増の51万台と気を吐いた。中国市場自体は景気減速の影響を受けているが、もともとシェアが小さいだけに「伸びしろ」がある。カローラは6月の車種別セダン販売で中国首位だったとの報道もある。6月には、日系メーカーの中で長らく販売首位だった日産自動車を抜いてトヨタがトップに立つなど、足元の好調さが目立つ。
中国市場がふるわない
一方、VWは近年の高成長に陰りが見えてきた。1~6月のグループ販売台数も首位に立ったとは言え、前年同期を下回った。グループ内ではアウディやポルシェといった高級車ブランドは前年同期を上回っているが、販売台数で全体の6割を占める主力のVWブランド乗用車が前年同期比3.9%減の295万台と落ち込んだ影響は無視できないレベルだ。
VW(とりわけVWブランド乗用車)失速で最も目立ったのは、得意としてきた中国市場での苦戦だ。これまで高成長を続けた中国市場全体が1~6月に前年同期比1.4%増の1185万台にとどまり、2014年の年間伸び(6.9%)から急減速した。4~6月の3か月は、各月ともで前年同月比マイナスに陥っている低調ぶり。それだけに中国を成長の足がかりとしてきたVWには痛手が大きい。2014年来のリコール(無償回収・修理)を巡る対応のまずさも客足を遠ざけたとされ、1~6月は前年同期比3.9%減の174万台にとどまった。
苦手とする米国市場で一向に存在感を高められないことも課題。1~6月にVWブランド車は前年同期比2.6%減と振るわず、販売台数17万台はトヨタの7分の1程度、「スバル」(富士重工業)にも10万台近く負けた。ただ、VWは地元欧州では景気回復の恩恵を受け、1~6月は3.7%増の211万台と好調だ。
全体への影響は小さいが、VWは2014年まで15年連続で「輸入車年間販売首位」を続けてきた日本市場で、今年1~6月は3万台弱。猛追する独メルセデス・ベンツ(3万台超)に16年ぶりに首位を明け渡したのも話題になった。7月に入って主力の中型車「パサート」を投入しテコ入れを図るが、年間でもベンツの後塵を拝する可能性がある。
トヨタとVWの年間首位争いは、どちらも決め手を欠き、あるいは弱点を抱えており、「最後まで勝敗の帰趨は分からない」(トヨタ幹部)との見方が多い。