新規入寮者の募集をめぐって、大学側と自治会側が対立している京都大「吉田寮」について、ネットでは「寮費」の安さが話題を集めている。
地元賃貸業者も「破格」と驚く寄宿料はなんと400円。光熱費や水道代を合わせても、月額たった2500円だ。
賃貸業者「間違いなく破格です」
京大敷地内の南端に位置する吉田寮は1913年建築で、日本最古の学生寮とされる。木造2階建ての3棟には6~10畳の和室120部屋があり、いずれも相部屋で個室はない。炊事場やトイレ、シャワー室などは共同だ。
驚くべき寮費は、「家賃」にあたる寄宿料400円で、水光熱費1600円や自治会費500円を合わせても総額2500円だ。京大には全部で4つの寮があり、いずれも格安。大学から徒歩15分ほどの熊野寮も寄宿料700円で光熱費などを入れても月額4100円だ。
京都の学生向けアパートの賃貸を手がけるフラットエージェンシー京都大学前店の担当者は、この価格について「間違いなく破格です」と驚く。同店によると京大周辺は家賃が高めだそうで、京大生の下宿の家賃相場はおよそ5.5万円だという。
吉田寮と同条件の物件はなかなかないが、もしあるとすれば「どれだけ安くても1.5~2万円前後になるだろう」と話す。
立地や築年数、設備などの違いはあるが、周辺他大学の寮と比べても京大寮は格安だ。同じ国立大の京都教育大は個室しかなく1万5000円(以下、光熱費などを除く)。私立の同志社大は最も安いところで9000円だ。そもそも学生寮がない大学も多い。
かつては文科省令に基づくものだった
なぜ京大寮はこんなに安いのか。同大によると、この金額は国立大を所管する文部科学省の省令に基づいて設定されたもので、1988年から据え置かれているのだという。
1961年に出されたこの省令は授業料のほか寄宿料について定めたもので、部屋の広さや単身か世帯用かなどで細かく規定されている。物価などの上昇に合わせ何度か改正があったが、例外として1959~75年に建築された寮は月額700円、1959年3月31日以前に建てられたものは400円とすることが定められた。吉田寮や熊野寮はこれらの規定に該当する。
文科省によると、国立大の独立行政法人化の動きに合わせて2006年に規定は撤廃され、寄宿料は各大学の裁量で定められるようになった。
寮費を変更した大学はあるものの、京大同様、当時の価格を据え置く大学もある。東京大や大阪大、神戸大などでは省令撤廃前の標準値が維持され、京都大ほどではないものの、安い部屋は4000円台だ(光熱費など除く)。
なお、京大は吉田寮の耐震性に問題があることを理由に学生に新棟への移住を促している。経過措置として寮費は現行の400円のままとするとしている。