カナダで毎年行われる「TED」講演会は、世界的な著名人らがプレゼンしていることで知られる。フジテレビの「27時間テレビ」では、そのライセンスなしに、講演会のパロディ版を放送したとして、ネット上で物議を醸している。フジテレビでは、事実関係を確認中だとしている。
アマゾン創始者のジェフ・ベゾス、U2のボーカルのボノ、元米国大統領のクリントン...。TEDの講演会には、そうそうたる顔ぶれがこれまでに登壇し、大きな話題を集めてきた。
「フジテレビのコンプライアンスはどうなっとる?」
2015年7月26日の27時間テレビでは、そのTEDをフジテレビでも開催するとして、「超人気お笑い芸人 本気のプレゼン大会」と題して生放送した。ただ、番組では、本気のTEDとは違い、こちらのテーマは「テレビが えらいことなってるけど どーすんの?」だとした。つまり、その頭文字を取ってパロディ版のTEDということだ。
プレゼンには、ナインティナインの岡村隆史さん(45)ら芸人が次々に登壇し、「テレビの危機」についてそれぞれの持論をぶった。岡村さんは、「ある意味、お笑いというのは一番マジメな職業だ」として、お茶の教室の先生がおちゃらけを嫌ってロケが中止になったことに怒りをぶつけるなどした。しかし、落ちは、交通費が自己負担になったことへの不満といったように、芸人のプレゼンは、講演会というよりはお笑いそのものに近かった。
とはいえ、番組でTEDと称してプレゼンをすることについて、放送前後から、「フジテレビのコンプライアンスはどうなっとる?」などとネット上で次々に疑問の声が上がった。
日本でも、ライセンスを受けた「TEDx」のコミュニティが、東京では「TEDxTokyo」といったように、そのイベントを開いている。TEDのホームページを見ると、ブランドガイドラインとして、イベントにはライセンスが必要で、ロゴも勝手に使ってはいけないとしている。
フジ「先方から連絡をいただいております」
ところが、27時間テレビは、「TEDx」のイベントとしての登録がないにもかかわらず、「TEDx27hTV」と称し、同じようなロゴも使っていた。
これに対し、TEDxSapporoオーガナイザーの鈴木卓真さんは、27日のフェイスブックで、次のような見方を示した。
「今回、TV局のような著作権やコンプライアンスを重視しなくてはいけない企業からこのような形で、『TED』を模した番組が行われたことは大変残念です。今回のことはすでにTED本国には報告されていますので、今後の動きを静観したいと思います」
ライセンスが必要なことについては、「ブランドを守る使命」があるからだと説明している。また、「ライセンスを取っても、現状のルールではそれをテレビで放送することはできません」ともしている。
弁理士の栗原潔氏がヤフー・ニュースに投稿した記事によると、栗原氏が商標登録について調べたところ、TEDは日本国内で商標を取得していなかった。しかし、栗原氏は、「商慣習として、商標が登録されていないからといって他人の業務に関するマークや名称を勝手に使ってよいとは限りません」と指摘している。
フジテレビの広報部では、取材に対し、TED側から何か言ってきたかについて、「先方から連絡をいただいております」と認めた。しかし、対応などについては、「現在、事実関係を確認している最中ですので、詳細については回答を控えさせていただきます」とコメントした。