国交省は沈黙守る
日本市場への足がかりを作りたいデルタと、スカイマークがキャンセルしたリース機の引き受けをちらつかせながら最終的に断ったANAHDに反発するイントレピッドの思惑が一致した形だが、慌てたのはANAHDだ。債権者集会では、債権総額と債権者数のいずれも過半数を得た案が可決される。イントレピッドは債権総額のうち約38%(議決権ベース)を持つとされ、2位の債権者である欧州エアバス(同約29%)やロールスロイス(同約16%)など、大口債権者のいずれか1社でも賛成に回れば、債権総額では過半数を押さえられそうな情勢だからだ。
ANAHD幹部は「エアバスやロールスロイスにとってANAは重要な顧客であり、最終的には賛成してくれる」と平静を装うが、動揺は隠せない。スカイマークの取引業者など小口債権者に対し、ANA陣営への賛同を呼びかける文書を送るなど、多数派工作に懸命だ。スカイマークの取引業者はほとんどがANAとも取引があり、国内企業であるANAが支援したほうが、将来的な取引の継続性が高まると訴えているという。
対するデルタも、エアバスから大量の機体を購入している「お得意様」である点は同じ。小口債権者についても「けっこう取引がある」(幹部)と自信を示す。デルタ陣営は債権者に対し、弁済額を上積みする追加提案も示すなど、両陣営の得票争いは激化する一方だ。
ただ、どちらに投票するか決められない債権者は、議決権を分割して投票することもできるなど、債権者集会の投票のしくみは複雑で、事前の票読みは極めて難しい。債権総額と債権者数の両方で過半数を取れず、両案とも否決される可能性も十分ある。その場合は一定の期間を置いて再投票にもつれ込む公算が高い。
一方、監督官庁である国土交通省の立場は複雑だ。国内航空市場の競争促進のため「第3極」を提唱してきたものの、今の政府・自民党は、民主党政権下で公的支援を受けて再生した日本航空に批判的で、ANAを擁護するスタンス。今回のスカイマーク支援についても沈黙を守っており、債権者集会での結論を慎重に見極める構えだ。