安保法案に反対するデモが各地で活発化する中、福岡教育大学(福岡県宗像市)の授業で40代の男性准教授が「安倍は辞めろ!」といったシュプレヒコールを学生に「練習」させたとして問題になっている。
国立大学法人の教員が政治的な主張を学生に強いるともとれる行動には批判が多数寄せられ、大学側も「看過できない」と問題視。事実関係の調査が終わるまで教員に対して授業停止を命じたという。
准教授の「戦争法案絶対反対」の掛け声に続いて学生も声をあげる
授業は2015年7月21日に行われ、授業を受けていた学生のツイッターへの投稿で問題が発覚した。ツイートには授業の様子を映した写真がついており、デモの様子が映ったスクリーンを前に准教授が何かを説明しているのが分かる。ツイートには、
「大学の講義で集団的自衛権反対のデモの様子紹介して、練習しようとか言い出して『戦争法案絶対反対』とか『安倍は辞めろ』とか練習させられてるんだけど」
と不快感がにじむ。別の学生のツイートによると、准教授の「戦争法案絶対反対」という掛け声に続いて、学生が「戦争法案絶対反対」と声をあげた。准教授は「安倍は辞めろ!」の次に「学長もやめろ!」とも叫んだところ、教室は大爆笑につつまれたという。
安保法案に反対する学生からは、准教授の発言は「お笑いネタ」だったという指摘も出ており、「練習させられた」というツイートの表現が授業の雰囲気を正しく伝えているかは微妙だ。
この授業に対する大学側の反応は比較的素早く、7月23日には学長名で対応方針を学内向けに発表した。発表では、授業内容がネット上に投稿されたとして、
「それを巡って、本学及び本学の教員や学生についての様々な意見が飛び交い、いわゆる炎上と呼ばれる事案が発生した」
と、大学側として「炎上」を認識していることを明らかにしている。授業翌日の7月22日には「問い合わせや苦情、対応を求める電話やメール」が15件ほど大学側に寄せられた。大学側が同日中に准教授に事実関係を確認したところ、「そういった事実はあった」などと答えたという。
「大学の教員及び教育の在り方の根幹にかかわる問題として、看過できない」
発表では、准教授の行為を、
「本学は、高等教育機関である大学として、しかも教員養成を行う国立大学として、国民の期待と負託に応える責務を負っている。このことに照らして、このたびの事案は、本学の教員及び教育の在り方の根幹にかかわる問題として、看過できない」
と厳しく非難。准教授には「このたびの事案で引き起こされた学内外の混乱を避けるため」授業の停止を命じ、履修していた学生に不利益にならないように対応する、としたという。今後、准教授の過去の授業を含めて問題がなかったか調査する方針で、懲戒等調査委員会を立ち上げて調査を始める。必要に応じて、准教授の授業を履修していた学生に対する調査も行う。
大学側はウェブサイトにも、
「本学の学生であることをもって学内外において誹謗中傷を受けるなどの不利益を被ることが無いよう徹底して学生を護るとともに、大学教員が行った教育活動の適正さについて関係法令や本学規則に照らした事実調査等を早急に実施し厳正に対処してまいります」
とする文章を掲載し、対外的にも事実関係を大筋で認めている。