編集長からの手紙
36年後の続報、自殺した試験管ベイビー第2号医学者の遅すぎる名誉回復

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色あせたスクラップにインタビュー記事

   当時の記事を読むと、出来るだけ科学的な根拠を書こうとした様子がうかがえる。科学的、医学的なことはよくわからないから、聞いたことをそのまま書こうとしたのだろう。

   ムケルジー博士は20年来不妊症を研究してきたが、動物実験と並行して人体でも実験し、百回以上の実験を重ねて成功したものだった。排卵を促進するため性腺刺激ホルモンを投与、その3日後、膣を通して卵巣から卵子を取り出す。卵子は5個取り出し、培養器で母親の15%の血清とともにパラフィンで保護・・・と書かれていた。

   この方法で熟練するとエドワーズ博士の手法より安全だと、ムケルジー博士は言っていた。

   1979年2月2日朝日新聞夕刊に「この命信じてほしい」という見出しでムケルジー博士のインタビュー特集を書いた。写真は、色あせたスクラップに残る、その記事である。

   インチキ説についても率直に聞いた。

「すべての科学の進歩には、高度な機械が必要だという誤った信仰があります。必要なのは昼夜を問わない長年の努力です。・・・偏見を持った人には、どんな写真や資料を出しても駄目でしょう。ある外国人医学者は、アメリカ人と日本人の受精卵をインド人に移植するようなことでもしなければ信用してもらえないと笑っていました」

   インドからのメールを受けて、あの時のことを少しずつ思い出した。ムケルジー博士とは何度も会い、食事も共にした。自宅を訪ねてご馳走になった。ところが、そのムケルジー博士が・・・。

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