美術館や商店街といった場で展示、公開された作品などをめぐって、政治的主張があると問題視されるケースが相次いでいる。現代芸術家の会田誠さんは、文部科学省をテーマにした展示作品などに美術館側から撤去要請があったと明らかにし、大きな波紋を広げた。
ツイッターなどインターネット上では、「表現の自由を守れ」と制作者側を擁護する声がある一方、「公共の場にはふさわしくない」と対応に理解を示す意見もあり、賛否が分かれている。
「政治的な作品」ではないと主張
会田さんが家族とともに制作した作品は、東京都現代美術館で開催中の子ども向けの企画展「おとなもこどもも考える ここは誰の場所?」で展示された。会田さんが2015年7月25日に投稿したツイッターなどによると、美術館側から「出品作のうち2作品に対する撤去要請がありました」という。
そのうち1点は「もっと教師を増やせ」「道徳の時間まったくいらない」などと6メートルの布いっぱいに墨書した、「檄」と題した作品だ。会田さんは「政治的な作品」ではないとし、「(文科省への)不平不満を述べているだけ」と説明する。もう1つは会田さん自身が出演したビデオ作品「国際会議で演説をする日本の総理大臣と名乗る男のビデオ」。安倍晋三首相ではなく、あくまで架空の首相だという。
会田さんによると、これらの作品に対し観客の1人からクレームが寄せられ、また東京都庁のある部署から要請があったため、美術館側から撤去するよう求められたという。一方、美術館や都生活文化局は朝日新聞の取材に対し、撤去ではなく「展示内容の見直し」を要請したと説明している(2015年7月25日付朝日新聞デジタル記事)。両者の言い分には食い違いがある。
騒動をめぐってツイッターなどネットでは「表現の自由が脅かされている」という意見が目立つ。
「今回のような権力批判は、最も保証されるべき表現の自由だと思う」
「検閲と一緒じゃないか。依頼した以上、責任持って会田誠一家の表現の自由を守ってほしい」
といった書き込みは多い。
一方で「子ども向け企画展だけに難しい問題」と美術館側の対応に理解を示す声もある。会田さんは作品の政治性を否定しているが、
「そもそも公共性の高い場所で政治主張すること自体おかしい」
「さすがに政治思想満載じゃ公共の場で、しかも子どもの企画展じゃだめだろ」
という見方があった。
アイドルの歌や七夕飾りでも物議
公共の場での政治的な主張が問題視されたことはほかにもある。アイドルグループ「制服向上委員会」は6月15日、神奈川県大和市で行われたイベントに出演し、
「諸悪の根源、自民党」
「本気で自民党を倒しましょう」
などと歌って物議をかもした。数日後には市と市教委が後援を取り消した。
長野市の商店街では7月25日からの「長野七夕まつり」に合わせて数日前から準備された七夕飾りに
「米国に人命差し出す狂気」
「戦と書きアンポと読ます」
など、安保関連法案に反対する声明が書かれた垂れ幕がつるされた。7月25日付の毎日新聞(電子版)によると、市に「七夕にふさわしくない政治宣伝」と批判が寄せられ、制作した商店主の男性はすでに自主的に撤去したという。