シンガーソングライター・久保田利伸さん(53)のツイッター、フェイスブックが政治にまつわる発言をきっかけに、論議が巻き起こっている。
「殺さない、殺されない。この時代、この平和ルールを保持する国がどれだけ尊いものか」というものだったが、それに、「綺麗ごとだ」といった批判が出た。
「『尊さ』で国防を語られても困る」
久保田さんは2015年7月22日、何の前触れもなく突然ツイートした。具体的に何に言及しているのか説明はないが、「平和ルール」というオリジナルの造語を持ち出し、それを持つ国を賞賛している。文脈などから、「平和ルール」は「戦争の放棄」や「戦力の不保持」を定める日本国憲法第9条を意識したものと思われる。
安全保障関連法案をめぐる国民的な議論が過熱する中、ツイートは素早く拡散。24日18時現在で4500以上もリツイート(拡散)され、数多くのコメントが寄せられた。
「戦わない平和の尊さ大事です」
「まったく同感です」
といった好意的なものだけでなく
「そんな奇麗事で、平和になりますか?」
「『尊さ』で国防を語られても困る」
「平和といっても日本が不利益を被ってばかりの名ばかりの平和ですよ」
「それは国内のルールだから通用することで、海外相手に通用するものではない」
という批判的なものも見られる。見た限り、数の上では後者の方が多そうだ。北朝鮮の日本人拉致事件や、過激派組織「イスラム国」(IS)の日本人人質事件、韓国による竹島の不法占拠問題を挙げ、「現在は平和でない」などと指摘する向きもある。好きな歌手だったのに本当がっかり、といった趣旨の感想も書き込まれた。
ツイートは久保田さんの公式フェイスブックページにも転載されており、こちらも24日18時現在570回以上シェアされ、120件以上のコメントが付くなど大きな盛り上がりを見せている。ただ、ツイッターとは違い、賛意を示すコメントが比較的多いようだ。
久保田さんは寄せられたコメントに全く答えておらず、ツイッターやフェイスブックもこれ以降更新されていない。ただ、一部まとめサイトがツイートをそのまま転載し、拡散を続けている。
東日本大震災発生時や、東京都知事選の際など、SNSを通じてしばしば時事ネタに意見を述べてきた久保田さんだが、ここまで拡散されたのは初めてと思われる。
久保田さんを「安保法案反対派」とみなす動きも
久保田さんは今のところ、安全保障関連法案への賛否は明らかにしていない。だが、前述のツイートが「法案に反対している」という印象を強めたのか、ネット上では久保田さんを「安保法案反対派」に区分けする人も出てきた。
ここ最近、安全保障関連法案をめぐってミュージシャンがネット上で発言する機会が増えているが、どちらかと言えば「反対」の立場を明確にする人が多い。
ロックバンド「くるり」のボーカル/ギター・岸田繁さん(39)は7月7日に「(安保法案は)戦争法案とか言うな言うてる人らもおるみたいやけど、戦争できる法案は戦争法案でしょーが」とツイート、ロックバンド「ASIAN KUNG-FU GENERATION」のボーカル/ギター・後藤正文さん(38)も抗議デモの告知などを度々リツイートしている。
一方、 歌手・俳優のつるの剛士さん(40)は17日、「『反対反対』ばかりで『賛成』の意見や声も聞きたいなぁ」とでまた違ったスタンスで意見を述べ、議論を呼んだ。