いったい、いくらかかるのだろう――。2020年に開かれる東京オリンピック・パラリンピックにかかる経費が、「最終的に2兆円を超すことになるかもしれない」そうだ。
大会施設や交通インフラの整備などを含めた、大会にかかる経費の総額というが、新国立競技場でさえ当初の1350億円から2520億円に膨れあがっているのだから、もしかしたら「2兆円超」では済まない可能性もないとはいえない。
「ソチは5兆円かかっている。五輪は大変なお金がかかる」
2020年東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長は2015年7月22日、東京都内の日本記者クラブで会見。大会施設の建設や交通インフラ整備など大会にかかる経費の総額について、「最終的に2兆円を超すことになるかもしれない」と述べた。
新国立競技場の建設を含めた大会にかかる経費は当初、約8000億円を見積もっていた。その3倍近くに膨れあがると想定しているようだ。
さらに森会長は、五輪史上最高の大会経費が投入された2014年のソチ冬季大会を引き合いに、「ソチは5兆円かかっている。五輪は大変なお金がかかると、あえて申し上げたい」と強調した。
新国立競技場の建設問題は「白紙」になったものの、多くの国民の気持ちがいま一つスッキリしないなか、森会長のこうした発言にインターネットでは、
「まだ間に合う。イスタンブールでやってもらえ」
「なんだか景気のいいな(笑)なんなら自腹でやってくれ」
「新国立競技場の仇は他の施設で取り返す!www 3倍の2兆円だぜ」
「またハコモノを造るんだよね。バブル時代からまったく変わってなくって呆れるわ」
「金輪際、五輪なんか開催しなくてよし」
と、厳しい声が目立つ。
ただ、なかには
「国内で金が回るイベントなんだから、盛り上げて景気よくやりゃいいんだよ」
「2兆=日本のGDPの0.4%。余裕だぜ」
といった、理解を示す声も。ちなみに、森会長が引き合いにしたソチ五輪の開催経費は500億米ドル。当時のロシアのGDP(国内総生産)は1兆8000億米ドルで、その比率は2.6%だった。
じつは、森会長は2014年10月にも大会経費が当初の見込みを大きく上回る、と話していた。五輪開催が決定する前の計画にそって競技会場を整備した場合、円安の進展や東日本大震災からの復興で建築資材や人件費が高騰している影響から、「総額で1兆円とは言わないが、それに近いお金になる」と、五輪組織委員会の試算をほのめかした。
それから、わずか9か月で2倍にハネ上がったわけだ。
当初の計画は総額約8299億円だった
一方、東京都の舛添要一知事は早くから計画の「甘さ」を指摘。東京都が常設会場となる東京オリンピック・パラリンピックの会場整備計画を見直し、バドミントン会場の「夢の島ユースプラザ・アリーナA」とバスケットボール会場の「アリーナB」、セーリング用の「若洲オリンピックマリーナ」(いずれも江東区)の3会場の建設を中止した。
東京都は、五輪招致時には新たに10会場を含む常設会場を1538億円で整備する計画だったが、資材高騰の影響や周辺整備などを含めて約3倍の4584億円に膨らむ見通しとなった。そのため、3会場の建設を取りやめて、約2000億円を圧縮した。
代替施設は、バスケットボールが「さいたまスーパーアリーナ」(さいたま市)、バドミントンは「武蔵野の森総合スポーツ施設」(新設、東京都調布市)。セーリングは「江の島ヨットハーバー」に変更される。
東京都は「基本的には7施設、約1500億円の上限に近づけたいと考えています」と話す。今後、計画が具体的に進む過程で経費が膨らんだとしても、「できる限り(1500億円の)範囲内に抑えたい」と強調。会場のさらなる見直しもあるかもしれない。
とはいえ、国から新国立競技場の建設費用の一部負担を持ちかけられたり、代替地となった江の島ヨットハーバーにしても施設の拡張・改修の程度によっては一部費用を求められたりする可能性もある。費用がかさみそうなことばかりだ。
ちなみに大会施設は、新国立競技場は国が、東京都の常設施設は都が、仮設会場の整備は五輪組織委員会が費用(723億円を拠出)を負担する。
招致段階の詳細な計画を示した「TOKYO 2020立候補ファイル」によると、当初は競技場の運営費など大会運営にかかる予算として3412億円。加えて、競技会場や選手村の建設、東京都内にあるスポーツ施設の改修、セキュリティーや通信インフラ、医療施設の整備などの間接的な費用として4887億円。あわせて8299億円が必要になると試算していた。