個別的自衛権の行使より抑制的になる
集団的自衛権の行使は同盟関係の基本中の基本なので、何らかの同盟関係を結んでいる国では、本来、議論にさえならない。この点、日米同盟がありながら、集団的自衛権の行使の是非を議論する日本は不思議な国だ。中国らの一部の国を除けば、多くの国では、今回の法案について、同盟関係がありながら集団的自衛権の行使を認めなかったこれまでの「非常識」を、世界の常識に変えるくらいのことと思っている。
世界の多くの国がどこかと何らかの同盟関係をなぜ結ぶかといえば、そのほうが戦争のリスクを減らせるからである。加えて、同盟なしの場合より、防衛費が安上がりにできるからである。ちなみに、日米安保なしで防衛しようとすれば、今の防衛予算は4倍以上の20兆円以上になるという試算もある。
集団的自衛権の行使は、(1)戦争のリスクを減少させること、(2)防衛費が安上がりになること、から望ましいのだ。さらに、国際政治・関係論では、集団的自衛権のほうが、集団のチェックがあるので、(3)個別的自衛権の行使より抑制的になること、とのメリットも知られている。
なお、上にあげた『Triangulating Peace』では、中国は民主主義国ではないので、戦争のリスクが高まることも示されている。この意味でも、日本が集団的自衛権の行使を行うのは、より合理性がある。
一部の野党やマスコミの「憲法違反だぞ」は、こうした合理性を無視する言葉だ。そもそも日本の戦争のリスクを減らす話が憲法違反になるはずがない。
++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣参事官、現「政策工房」会長
1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。著書に「さらば財務省!」、「恐慌は日本の大チャンス」(いずれも講談社)、「図解ピケティ入門」(あさ出版)など。