繰り返し出てくる「牛乳有害説」
「牛乳が健康に悪いか否か」という議論は以前から繰り返されてきた。少し前になるが2005年、外科医の新谷弘実さんによる「病気にならない生き方」(サンマーク出版)出版をきっかけに引き起こされた、「牛乳論争」は有名だ。
後にベストセラーともなった同書の中で新谷さんは、牛乳は骨粗鬆症の原因になる、カルシウムを摂るために飲んだ牛乳がかえって体内のカルシウム量を減らす、などと警告。これに仁木良哉・北大名誉教授が「科学的検証ない」と反論し、日本酪農乳業協会(Jミルク)も新谷さんに公開質問状を提出するなど、大きな騒ぎとなった。
最近では14年10月29日、英医学誌「ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル」が、「スウェーデン人を対象に調査したところ、牛乳摂取量の多い人は少ない人と比べて寿命が短く、女性では骨折が増えた」というスウェーデンのチームによる研究結果を発表し、ネット上で話題を呼んだ。
新谷さんの説は、すでにさまざまな研究者から反論された。さらに、英医学誌も、調査対象としなかった民族では結果が当てはまらない可能性を示唆している。「牛乳有害説」は現段階では根拠薄弱と言えそうだ。
ちなみに、公益財団法人「骨粗鬆症財団」(東京都中央区)も公式サイト上に、「『牛乳や乳製品が骨粗鬆症の原因になる』という情報は、科学的なデータに基づかない意見であると思われます」との見解を発表している。