国内のアウトレットモールで、新規オープンや増床などのリニューアルが相次ぐなど、訪日外国人客の取り込みを強化している。
その効果もあってか、アウトレットモールを訪れる外国人観光客が急増。少子高齢化の進展で、いまや小売業は百貨店も専門店も、中国人をはじめとした訪日外国人客が「頼みの綱」になっている。アウトレットモールも例外ではないようだ。
Wi‐Fiスポットや外貨自動両替機、礼拝堂も...
北陸で初めてのアウトレットモール、「三井アウトレットパーク北陸小矢部」が2015年7月16日、富山県にオープンした。ファッションブランドを中心に173店舗が入居。そのうち、「ユナイテッドアローズ」や「ナイキ」「フランフラン」などの81店舗が「北陸初進出」という。
北陸の気候を考慮したエンクローズドモール(屋内型モール)を採用。富山県の自然や伝統と、最先端のショッピング環境が両立した空間を提供する。観覧車や子ども向けの遊戯場も設けた。
北陸新幹線の開通で、北陸エリアは国内外から観光客の増加が期待されている。アクセスのよさを高めるため、金沢市からの直通バスも走らせる。
三井不動産は7月14日にも、「幕張」(千葉市)をグレードアップ。新たに57店舗がオープン、34店舗が移転リニューアルして、合計137店舗を有する駅前立地の大規模アウトレットモールへと集客力を高めた。
幕張は成田と羽田の両空港からのアクセスのよさに加えて、周辺には幕張メッセなどの国際的な施設や多くのホテルが集積しており、外国人客の利用は少なくない。キャリア向け女性のラインナップを強化したほか、外国人客に人気のドラッグチェーン「マツモトキヨシ アウトレット」が国内のアウトレットモールに初出店した。
三井不動産によると、大規模商業施設を訪れる外国人客(ツアーバスの入場台数)は、2014年に全体で前年比1.5倍増。なかでも、東京・お台場の「ダイバーシティ東京プラザ」は前年より2倍に増えたという。「買い物へのメリットを感じてもらえるよう、免税店を増やしています」とし、多言語対応や無料Wi‐Fiスポット、外貨自動両替機はいまや標準装備。「最近は『プレイヤールーム』(礼拝室)を設けるケースが増えています」と話す。
「ツアー行程」に・・・ 海外で繰り広げられる誘致活動
国内最大規模のアウトレットモール「御殿場プレミアム・アウトレット」は2015年7月13日、開業15周年を迎えた。アウトレットの老舗も、最近は外国人客が急増している。
外国人客(ツアー客のみ)は2013年度の25万人が、14年度は43万5000人に急増。運営する三菱地所・サイモンは、「アジア各国からの来場は一律増加していますが、やはり中国のお客様は顕著です」と話す。
外国人客が増えている要因について、円安に伴って訪日外国人客自体が増えていることに加えて、「当社では2004年ごろから海外のお客様の誘致活動を行っており、14年度からはインターナショナルツアーマーケティングチーム(ITMG)を立ち上げて、その活動をさらに強化しています」と説明する。
御殿場は、外国人客がよく訪れる人気の富士山や箱根が近く、ツアーの行程に組み込みやすい。「御殿場は都市部から一定の距離もあり、交通手段が必要になるので、団体ツアーでの来場が中心となっています」という。
外国人客が増える傾向はどのアウトレットも同じだが、「とくに御殿場や、空港に近い『酒々井』(千葉県)や『りんくう』(大阪府)、九州最大級の『鳥栖』(佐賀県)は伸び率が大きい」。2014年度の外国人客(ツアー客)の全体の来場者数は、前年と比べて約160%増の68万人にのぼった。
買った商品を宿泊先まで届けるサービスも
軽井沢プリンスホテルに隣接、7月17日から20周年アニバーサリーウィークを展開する「軽井沢・プリンスショッピングプラザ」(長野県軽井沢町)は同日、「スマイルコンシェルジュ」をオープン。お客が買った商品を宿泊する周辺のホテルに配送するサービスを開始した。
運営する西武プロパティーズの親会社の西武ホールディングスによると、2013年度の実績で外国人客を乗せたツアーバスの来訪実績が前年度より67%増えた。14年度は現在集計中だが、「大変好調です」と手応えを感じている。
また、北海道最大級の「千歳アウトレットモール・レラ」(千歳市)に直近1年間に訪れた外国人客(ツアーバスの入場台数)は前年より140%強増えた。6月単月では160%にのぼったという。なかでも中国人ツアー客の伸び率は一番で、「前年より約5倍は増えています。中国人客の来場構成比は10~15%ですが、買い上げ単価が高いことから売上げでは2倍近いと思われます」と話す。
韓国やインドネシアなどアジアからの旅行客も増加中。新千歳空港に近く、「発着の前後で利用されることが多い」そうだ。
そんな活況に沸くアウトレットモールだが、最近は競争が激化する一方、入居するテナントが飽和状態にあるとの指摘もあり、リニューアルやサービスの充実などで新たな魅力を提供し続けることが欠かせなくなってきているようだ。