2015年7月16日に衆院本会議で行われた安保法案の採決は、直前に野党が会議場を退出したこともあって、淡々と行われたように見えた。だが、委員会の採決直前に複数の閣僚から「理解が進んでいない」という声が出たり、採決後も、様々なトラブルは「自民党の責任」だと執行部批判も飛び出すなど、党や閣内の不協和音も目立ち始めた。
今後、「60日ルール」が発動されるまでは参議院での審議が続くが、野党からは早くも自民党内の「厭戦気分」を指摘する声すら出ている。
石破氏の発言は民主党に攻撃材料与える「オウンゴール」?
委員会での採決を翌日に控えていた7月14日の閣議後会見では、2人の大臣が異論を唱えた。
「説明が十分だという理解はまだ進んでいないというふうに思う」(塩崎恭久厚労相)
「あの(世論調査の)数字を見て、国民の理解が進んだと言い切る自信はない」(石破茂地方創生担当相)
特に石破氏の発言については、民主党の枝野幸男幹事長が
「政治家なら(採決を)止めるべき」
と反応。結果的に民主党側に攻撃の材料を与える「オウンゴール」になってしまった。
本会議で法案が可決された7月16日にも異論は出た。採決後、小泉進次郎衆院議員(復興政務官)は法案審議について「反省点だらけじゃないですか」と憤った。
「憲法審査会で自民党自身がお招きをした学者の方が憲法違反と言ったことも、自民党自身のやったことですよね?そして、自民党の若手懇談会といわれるああいった場での(「マスコミをこらしめたい」といった)発言のさまざまな影響というのも、自民党自身の責任ですよね」
「昔の自民党のよくない部分の一端が垣間見えるような気がして、結果として法律の理解も進んでいないという状況につながっているのではないか」
共産党議員に「このやり方はしんどい」とぼやく議員も...
村上誠一郎、若狭勝両衆院議員が体調不良を理由に本会議を欠席した。以前から安保法案に反対していた村上氏については事実上の造反だとの見方もあるが、谷垣禎一幹事長は
「腰痛だということで診断書も出てきている。事情を聴く必要など私は何も感じていない」
と不問に付す考えだ。
こういった異論は、今の自民党ではあくまでも例外だ。TBSのニュース23が7月15日の放送で明らかにしたところによると、番組が自民党議員を対象に行ったアンケートに回答したのは402人中わずか5人。党内で明示的な箝口令が出ているかは必ずしもはっきりしないが、議員が党外に向けて発言しにくくなっているのは確かだ。
それでも、中には執行部への疑問を他党の議員に漏らす人もいるようだ。共産党の大門実紀史参院議員は、廊下やエレベーターで与党議員と会った時に聞いた「ぼやき」の内容をフェイスブックで明かしている。
「自民党H議員( 大臣経験者 )は『ほんとは正面突破(憲法『改正』)すべき。このやり方はしんどいねえ』といい、 若手のK議員(1期目、官僚出身)は『もっと地元にほめられることをやりたいです』という」