2014年7月に長崎県佐世保市で起きた女子同級生殺害事件で、長崎家裁(平井健一郎裁判長)は15年7月13日、加害者の少女に対して医療(第3種)少年院送致とする保護処分を決めた。検察側は「刑事処分相当」として検察官への逆送を求めていたが、家裁は刑罰を科すのではなく更生可能性に賭けた形だ。
処分決定後、検察側は「再犯の危険が大きい」とするコメントを発表。表面上は裁判所の判断について「コメントする立場にない」としているものの、実質上は判断に強く反発している珍しい内容だ。
犯行の数日後に16歳の誕生日迎える
事件は14年7月27日、佐世保市内のマンションの1室で高校1年の女子生徒(当時15)が殺害されているのが見つかり、部屋に住んでいる同級生の少女(同)が逮捕された。少女は約5か月の精神鑑定を経て、殺人などの容疑で15年1月に家裁送致されていた。
15年2月に少年審判が始まり、再び家裁が鑑定留置を行うなど約4か月をかけて今回の処遇を決めた。家裁決定では、少女を重度の自閉症スペクトラム障害(ASD)だと認定。少女がASDの「非常に特殊な例」で、ASDが非行に直結したわけではなく周辺環境も影響したとした。
01年に改正された少年法では、16歳以上による殺人は検察官送致(逆送)が原則だが、少女は犯行時15歳。その数日後に16歳の誕生日を迎えている。
決定後、長崎地検は上保由樹次席検事の名前でコメントを発表している。長崎地検は、記者クラブ加盟社以外にはコメントを公表していないが、産経新聞(7月14日付朝刊)によると、その内容は
「いまだに殺人欲求を抱き続けており、再犯の危険が大きいが、医療(第3種)少年院には最長で26歳までしか収容できない。家庭裁判所もその点を十分に考慮した上で判断されたはずであり、その当否を当庁がコメントする立場にない」
というもの。収容期限後の再犯の可能性について強く警告する異例の内容だ。表面的には「コメントする立場にない」とあるものの、「その点を十分に考慮した上で判断されたはず」の部分が皮肉だとも読めなくはない。
検察のコメントは「対応を検討」「適切に対応」といったものがほとんど
朝日新聞によると、「生涯にわたって十分な対応を継続していく必要がある」ともクギをさしたようだ。
少年事件で家裁が検察官送致(逆送)を決めた事例としては、最近では15年2月に川崎市の多摩川河川敷で中学1年生の生徒(当時13)が殺害された事件がある。事件では、神奈川県警がリーダー格の少年(18)ら少年3人を殺人容疑で逮捕。横浜地検が殺人容疑でリーダー格の少年を、傷害致死容疑で他の少年2人をそれぞれ家裁送致し、横浜家裁は非公開の少年審判で刑事処分相当と判断し、3人を検察官送致(逆送)することを決めた。横浜地検は3人を起訴し、成人と同様に裁判員裁判で審理される見通しだ。