元男子陸上選手の為末大さん(37)が、自身のホームページ上で新国立競技場建設の現在の案に反対を表明した。
他にも元ラグビー選手の平尾剛(40)さんや衆議院議員の後藤田正純議員(45)も反対の声を上げており、現計画への反対の声はますます増していきそうだ。
「スポーツがこれ以上金にまみれる姿は見たくない」
為末さんは2015年7月10日に自身のブログで、
「いろんな意見を聞いて考えてきた私の結論を言いますと、私は三つの立場から新国立競技場建設の今の案に反対です。」
と表明。その三つの立場とは陸上選手、スポーツ選手、日本国民としてだと書き、理由として、新しい国立競技場はサブトラック(ウォーミングアップのためのグランド)がなく陸上競技の世界大会が開催できないこと、スポーツ界もしくはアスリートが日本に負担をかけたと言われお荷物扱いされるのがいやであること、経済的に負担が大きすぎることをそれぞれ挙げた。
また、元ラグビー日本代表の平尾剛さんも反対の立場を見せた。7月8日、自身のツイッターで
「これまでかなり自制してきたけれどもう辛抱たまりません。おかしいでしょ!やっぱり。あんなスタジアムに頼らずとも開催する方法を探ればいいだけの話ちゃいます?声、あげませんか、スポーツ界の中から!こんな不条理は断じて許せない。」
と発言。さらに10日には、スポーツ関係者が暗黙のうちに発言を抑制していることに耐えられなくなったとして、
「誤解のないように言っておくと五輪とW杯の開催自体には反対しません。元ラグビー選手の立場からはむしろ歓迎しています。だけど巨額の建設資金を投じてスタジアムを建設することには明確に反対の意を表明します。」
「大好きなスポーツがこれ以上金にまみれる姿は見たくありません。政治に利用されるのももうたくさんです。この思いが今の僕を突き動かしています。」
と、巨額な競技場の建設に強い反対姿勢を示した。
他にも、東京新聞の報道によると、元女子マラソン日本代表で自身も招致活動に協力した有森裕子さん(48)も、7月6日の新国立競技場問題を考えるシンポジウムで、
「アスリートは協会に属し、そこで育ててもらい、皆さんの応援を受けて競技に没頭することが使命。その現場(協会)を多少なりとも触発するようなことはできない。その気持ちはくんでもらいたい」
とアスリートたちの立場に配慮しながらも、
「オリンピックが、皆さんの負の要素のきっかけに思われるようなことは本望ではない。一人でも多くのオリンピアンが応援していただけるよう、何かできれば」
と涙ながらに心情を吐露している。
安藤忠雄「なんでこんなに増えてるのかわからへんねん」
この問題に対し、自民党内からも異論が噴出し始めている。後藤田衆議院議員はスポーツ報知や日刊スポーツなどの取材に応じ、現計画への反対と自身で見直し計画した新たな案を語った。
後藤田議員の案では、オリンピックの後、収容人数を8万人から5万5000人に縮小。プロ野球チームのホーム球場にするとともに、スタジアムの一部を移動し新秩父宮スタジアムに再利用してラグビーとサッカーに使用するというもの。現行案より約1500億円、整備費を削減できるとしている。
後藤田議員はTBSの取材に対して、
「何のため誰のためのオリンピックですかと。誰のお金なんですかと。戦中のまさに玉砕的な何かそういう走り出したら止まらないみたいなね、これはやっぱりやってはいけないんですよ」
と、現行案への危機感を見せた。
7月11日放送の日本テレビ系「ウェークアップ! ぷらす」では、新国立競技場のデザインコンペティションの審査委員長を務めた安藤忠雄さん(73)と同番組の司会である辛坊治郎さん(59)が電話で直接やり取りしたことが放映され、その中で安藤さんは
「コンペの与条件としての予算は1300億円であり、応募者も認識しています。提出物には建築コストについても示すように求められていました。それは当然評価の一つの指標となりました」
と、下村博文文部科学相が「値段とデザインを別にしていたとしたらそれはずさんだったということになる。そういう検証はすべきだと思う」とコメントした件に反論した。
また、安藤さんはデザイン決定後の基本設計や実施設計にはかかわっていなかったことも明らかにし、辛坊さんに対して
「なんでこんなに増えてるのかわからへんねん」
と漏らしたという。