在留管理制度の変更に伴い、多くの在日韓国人が期限までに証明書の切り替えができなかったとするデマがネット上で流れ、法務省の入国管理局に「不法滞在だ」とする通報が相次いだことが分かった。
在日外国人については、2012年7月から新しい在留管理制度に変わり、15年7月8日の期限までに、これまでの外国人登録証明書から在留カードへの切り替えが必要になった。
在日だとする著名人らの通報リストも作られる
在日韓国人についても、特別永住者証明書への切り替えが必要となる。
これに対し、2ちゃんねるでは14年7月のスレッドで、在日韓国人は兵役義務を果たしていないとして韓国からパスポートが下りず、その結果、特別永住者証明書も取れなくなって、1年後の期限切れから強制送還されるという根拠のない書き込みがあった。これが後に、まとめサイトなどで取り上げられて話題になり、ツイッターでも15年6月ごろになって、不法滞在を通報すると5万円の報奨金が出すとの入管の告知を元に、在日韓国人を通報するよう呼びかけが行われた。
そして、読売新聞が15年7月6日のサイト記事で、在日外国人5万人強が5月末時点で切り替えをしていないと報じると、2ちゃんやツイッターで在日韓国人のことが騒ぎになった。
ブログなどでは、根拠もなく在日だとする著名人らの通報リストまで作られ、期限切れの9日に、入管にメールや電話で通報したとの報告も相次いだ。入管サイトに、システムエラーの表示が出たのは、通報が相次いでサーバーがダウンしたのではないかとの憶測も出た。
もっとも、10日になっても、在日韓国人が在留資格を失って強制送還されたという報道は出ておらず、ネット上では、「まさか真に受けて電凸しまくったのかネトウヨ」「これって偽計業務妨害では。デマを拡散した人はその幇助」といった指摘が出ている。
法務省「在留資格を失うことも強制送還もない」
法務省の在留管理業務室では、取材に対し、7月9日に通報メールが大量に来ており、電話も来ていたことを明らかにした。「ネット上のうわさについては承知しています」としたが、在日韓国人が在留資格を失ったり強制送還されたりする可能性については、強く否定した。
「特別永住者の方は、外国人登録証明書の有効期限までに切り替えればいいことになっています。一部で7月8日までに切り替えが必要な方もおられますが、期限切れ後であっても、申請は受け付けることにしています。それは、在留カードに切り替えが必要な方も同様です」
特別永住者は、ほとんどが在日韓国・朝鮮人で約36万人(14年末現在)がおり、7月8日までに切り替えが必要な人のうち、6月末時点で2万5000人が切り替えていなかった。切り替えていない場合は、罰則の対象になるものの、それは悪質性などを考えて個々の事案で判断するとしている。
通報が殺到してサーバーがダウンしたかどうかについては、法務省の入国管理局では、「調査中」だとしている。