神戸連続児童殺傷事件の加害者男性「元少年A」の手記「絶歌」出版から2015年7月10日で1か月がたったが、いまだ騒動は収まらない。
被害女児の母親が朝日新聞の取材に応じ、匿名で手記を発表したことを「卑怯」と非難したことで、匿名出版や印税の受け取りについて議論が再燃している。
「素性を明らかにしないのは卑怯」
長女彩花さん(当時10)の命を奪われた山下京子さんは2015年7月10日の朝日新聞の記事で
「事件に向き合う覚悟があり、自分の言葉に責任を持つのなら、実名を出すべきだ。素性を明らかにしないのは卑怯だと思う」
と語った、と報じられた。
また本を出版し、印税を受け取っていることにも否定的だ。男性からは定期的な送金があることを明かしたが「印税には贖罪(しょくざい)の思いなどこもっていません」という。出版によって元少年Aを崇拝する人たちを刺激し、「殺人を犯して本を書き、お金を得ることがまかり通ってしまうこと」「ものの善悪がわからなくなること」を危惧しているという。
元少年Aを「卑怯」だとするのは山下さんだけではない。被害者の土師淳さん(当時11)の父、守さんは産経新聞(6月29日記事)の取材に、
「32歳の責任ある成人男性が、少年法の陰に隠れて匿名で本を出し、遺族を傷つける。卑怯だ」
と答えている。
印税収入は2000万円以上か
被害者遺族の言葉を受け、ツイッターなどネットには「『手記を出版するなら実名を晒せ』という遺族の気持ちは理解できる」という意見が目立つ。
「確かに今はもう成人だし、被害者は実名だし」
「安全な場所から表現の自由を行使して好き勝手ほざき、遺族は思いを踏みにじられ、全く守られていない。フェアではない」
などの書き込みがあり、実名を公表せずに「元少年A」というペンネームを使ったことを非難する動きが再燃している。
印税受け取りについても、利益は被害者や遺族への弁済にあてる米国「サムの息子法」にならった法律を日本でも制定すべきだという意見が根強い。印税による具体的な収入額は分からないが、一般的なレートが10%前後であるため、初版10万部と増刷5万部を合わせれば2000万円以上になる。現時点で元少年Aは使い道について明らかにしていない。