「スタジアムだけで通常の3倍の高価格」
巨大アーチが採用された背景には、費用負担についての責任の所在が当初から不明確で、五輪招致ありきのドンブリ勘定で奇抜なデザインが採用されたことがある。
開催が決まって初めて、巨額な建設・維持費用が分かったわけだが、安倍晋三首相は13年9月の最終プレゼンで、「他のどんな競技場とも似ていない真新しいスタジアム」と国際公約していた。このため、デザインの根本的な見直しができなかったらしく、菅義偉官房長官も15年7月8日の会見で、「安易にデザインを変更することは国際的な信用を失墜しかねない」と説明に追われた。
しかし、新国立競技場の総工費が3000億円にも膨らんだのは、アーチのためばかりではないというのだ。
開催が決まった当時に都知事だった作家の猪瀬直樹氏はツイッターで、「なぜキールアーチと関係ないスタジアムだけで通常の3倍の高価格なのか、不可解。資材高騰では説明がつかない」と疑問を呈した。そして、旧国立競技場の解体工事に際して、入札に官製談合があった疑惑が月刊誌に書かれ、それは新国立競技場の建設でもありうるとされたとして、フェイスブックでは、「ゼネコンとの随意契約なのだから第三者機関に検証する機会を与えないで決定したのは、アンフェアな問題を抱えているからと疑われも仕方ない」と指摘した。
もちろん、今回に官製談合があったという証拠はまったくないが、政府が高額な費用のまま押し切ろうとする背景には、景気を公共事業で支えたいという思惑がある可能性はありそうだ。