中国株の暴落で、日本の「インバウンド消費」への影響を懸念する声が漏れはじめている。
東京・銀座や秋葉原、大阪の心斎橋界隈などでは大きな買い物袋を抱えた、多くの中国人観光客が街を闊歩する姿を見ない日はない。百貨店や家電量販店など、いまや日本の小売業を支えているのは中国人観光客といっても過言ではない状況に、「チャイナ・ショック」が冷や水を浴びせたというのだ。
1日のうちに10%もの値幅で動く異常事態
急降下に急上昇、不安定な中国株への警戒感が強まっている。上海総合指数は2015年7月9日、前日比で5.76%上昇したものの、「前場では約3%下落しており、1日のうちに10%もの値幅で動くことが『超』異常事態です」(第一生命経済研究所経済調査部の藤代宏一・主任エコノミスト)という。
8日には上海と深センの証券取引所に上場する2808社のうち46%にあたる約1300社が売買を停止する事態に陥った。中国株に引きずられるように、同日の米ニューヨーク株式市場は急反落。東京株式市場でも、日経平均株価の終値が前日比638円95銭安の1万9737円64銭と今年最大の下げ幅を記録した。
ほぼ全面安の展開だったが、なかでも「爆買い」と呼ばれる中国人観光客の消費に悪影響が出かねないとの見方から、小売業などの「インバウンド」銘柄の売りが目立ち、軒並み下落した。
観光庁がまとめた15年1~3月期の訪日外国人消費動向調査によると、中国人観光客の買い物代金は1人あたり17万9902円。前年同期より36%も増え、また訪日外国人客全体の平均(7万1926円)の約2.5倍とダントツ。
中国株の下落が続けば、そんな「お金持ち」の中国人観光客が保有する株式の含み資産が目減りするので、「爆買い」が沈静化してしまうというわけだ。
9日の東京株式市場では、前日に5.21%安となったJ.フロントリテイリングや4.78%安だった高島屋がやや戻したものの、三越伊勢丹ホールディングスは続落して0.46%安で引けた。家電量販店大手のヤマダ電機が1.08%安、ビックカメラも4.99%安とさっぱり。親会社が中国の家電量販大手で、中国人観光客の利用が多い総合免税店のラオックスは1.70%安と続落した。
また、ドラッグストアのマツモトキヨシホールディングスも0.19%安と続落。化粧品の資生堂は0.11%安と、振るわなかった。