夏本番を目前に控え、かき氷を食べたくなる人も多いだろう。そんな人には気になる情報がネット上で飛び交っている。なんと、かき氷に使うシロップはすべて同じ味付けだ、というのだ。
確かに、イチゴやブルーハワイ、レモン、メロンなど色とりどりのシロップに違いをもたらしているのは、多くの場合着色料と香料だ。専門家は「食べものの『見た目』と『ニオイ』にどれほど味が左右されるかが分かります」という。
「『今まで騙されていたのか』とショックを受ける人は多いです」
最近は果汁をふんだんに使った無添加シロップも販売されているが、食品スーパー等で見かけるかき氷シロップの多くは、一般に果汁を使用していない。果汁に代わる甘味成分は果糖ぶどう糖液糖や甘味料で、これに香料や酸味料、着色料などを加えて作る。
ある食品メーカーが販売するかき氷シロップの原料はいちご味でもメロン味でもブルーハワイ味でも「果糖ぶどう糖液糖、砂糖、食塩、香料、酸味料、着色料」で、違いは着色料と香料の種類だけだった。
同じ原料なのに、なぜ違う味に感じるのか。味の錯覚などを研究している東京大学大学院情報理工学系研究科助教の鳴海拓志さんは、かき氷シロップは着色料と香料以外ほとんど同じ原料だと話した上で、「見た目」(視覚)と「匂い」(嗅覚)が味に及ぼす影響の大きさを指摘した。
どちらかが欠けても味に大きな変化をもたらすらしく、「かき氷シロップが無色透明だと匂いを変えても、いちご味かメロン味か、レモン味かは分からないと思います」という。
脳は食べ物の「見た目」と「匂い」のマッチングで味を判断している。外国や異文化の食べ物が苦手だと感じてしまう理由は「見た目とニオイが食べる前に想像していたものとかけ離れているから」だという。
ただ、こうした仕組みはあまり知られていないようで、
「(かき氷シロップの例は)講演などで話すと『今まで騙されていたのか』とショックを受ける人が多いです」
と明かす。
鳴海さんは現在、「Meta Cookie」(メタクッキー)という研究にも取り組む。バタークッキーでも、チョコレートの見た目と匂いを加えれば、食べた時にチョコレートクッキーの味がすることを発見した。
すべては「脳が引き起こす錯覚」なのだという。