トヨタ、新興国戦略車「IMV」を11年ぶりに全面刷新 タイから初輸出、世界販売台数トップの座を左右する存在に

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   トヨタ自動車に突然降ってわいた想定外の難事、「初の女性役員が麻薬取締法違反(輸入)で逮捕」。トヨタは、2015年7月1日に当の女性役員の「依願退職」を公表する形で幕引きを図った。

   一方、そのニュースのせいで影が薄くなったが、翌日の 2日にトヨタは全面刷新した新興国戦略車「IMV」のピックアップトラックを、主要生産拠点のタイから初輸出した。懸案をかたづけて新たな新興国戦略を本格スタートさせた格好だ。

  • 新たな新興国戦略を本格スタート
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目玉人事が大誤算

   まずは女性役員問題の経過を振り返っておこう。

   警視庁に麻薬取締法違反(輸入)容疑で逮捕されたのは、広報担当の役員、ジュリー・ハンプ常務(55)。米ゼネラル・モーターズ(GM)などで勤務したグローバル人材で、今年4月、豊田章男社長が直接手がけた「外国籍かつ女性」の「目玉人事」だ。日産自動車などに比べて遅れている人材の多様化を進める象徴だっただけに、あまりにも「誤算」な逮捕劇だった。

   そんな悪夢を一刻も早く振り払うかのように、翌日に発表されたのが、新興国戦略車「IMV」のピックアップトラック(荷台付き乗用車)を主要生産地のタイから世界に輸出する、とのニュースだ。

   IMVとは英語の「イノベーティブ・インターナショナル・マルチパーパス・ヴィークル」の略で、「技術革新を施し、世界で多様な目的で走る車」というような意味だ。トヨタが2004年に生産を始め、現在ではタイのほかインドネシアやアルゼンチンなど約10か国で生産し、190を超す国・地域で販売する。2004年当時、「アジア担当」の専務だった豊田章男現社長の肝いりのプロジェクトで、共通のプラットフォーム(車台)を活用して東南アジアや南米、アフリカで人気の高いピックアップトラックなどを生産している。

   昨年の生産台数は96万5000台に上り、トヨタグループの年間生産約1000万台の1割を占める存在で、円安で絶好調の富士重工業(88万8000台)より多い規模だ。

   ただ、IMVが2012年に約110万台を生産販売したことを考えると、新興国の景気減速に歩調を合わせるような失速感は否めない。

VWとの世界競争に勝つ

   こうした近年の動きに危機感を抱いたトヨタが、生産開始から初めての全面刷新に踏み切ったと見られている。第1弾が、7月2日にタイから輸出したピックアップトラックで、タイ国内では先行して5月に発売していた。豊田社長は「ある自動車会社が商品を全面的に入れ替えるようなもの」と今回の全面刷新を表現したという。

   刷新により、燃費性能は約1割向上。走りの静かさなどを含めて乗り心地も改善したほか、新興国では重要な「壊れにくさ」も高めたという。一方で値上げ幅は1割程度に抑えることで、他社との競争力を高めた、というのがトヨタの説明だ。

   トヨタの最大のライバルである独フォルクスワーゲン(VW)は中国を最大の成長拠点と位置づけ、工場新設をはじめとした設備投資も増やしている。一方、トヨタのIMVは苦手とする中国以外の新興国を意識しており、とりわけトヨタ車の人気が高い東南アジアが主要なターゲットだ。中国は世界最大の自動車市場とはいえ、今後は成長の鈍化が指摘されるだけに、このIMVが世界販売台数トップの座を左右する存在に成長する可能性を秘める。

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