カレー専門店の「カレーハウス CoCo壱番屋」などを運営する壱番屋が、絶好調だ。2015年5月期連結決算で、過去最高益を更新した。
国内既存店ベースの売上高が4.5%増、客数は2.9%増、客単価は1.6%増と堅調だったことがその要因だ。
豊富なトッピングと顧客ニーズにあわせた店づくりでリピーター増える
外食チェーンは、ファミリーレストランなどが好調な一方で、ハンバーガーや牛丼チェーンなどのファストフードは苦戦を強いられている。日本フードサービス協会によると、ファストフードの中でも、ハンバーガーや牛丼などの売上高や客数がさっぱりなのに対して、カレー専門店は好調に推移しているという。
そうした中で、カレー専門店チェーンの「ココイチ」が元気だ。運営する壱番屋が2015年7月6日に発表した15年5月期通期の連結決算によると、営業利益が前年同期と比べて6.5%増の46億円、純利益は14.2%増の27億円で、ともに過去最高益を更新した。
売上高は3.4%増の440億円。壱番屋は、2014年4月にテレビ番組で取り上げられたことをきっかけに、「新規のお客様と、しばらく来店していなかったお客様がリピーターとなって来店してくれるようになりました」と話す。
そこで切り上がった来店客の水準を通期にわたって持続できたことに加えて、アイドルグループ「SKE48」やアニメ「ドラゴンボールZ」とのコラボレーションキャンペーンで、新規顧客の開拓を強化したことが奏功。客数が増え、またメニューブックなどで複数のトッピングを組み合わせたメニューを訴求したことや、さらに15年3月に一部のトッピング品を値上げしたことで、客単価が上昇した。
もともと「ココイチ」の価格は、同じ外食チェーンの牛丼などと比べて決して安いとはいえない。最も安いのは「ポークカレー」で442円だが、多くのお客がトッピングを注文することで、客単価を押し上げている。
トッピングは40種類近くもあり、さらに辛さとごはんの量を選べる「仕組み」。これに定番の人気カレー、「手仕込ささみカツカレー」(6か月で約421万食を販売)や「チキンと夏野菜カレー」(3か月で約226万食を販売)が、売り上げアップに貢献した。
その一方で、同社は10年前から店舗リニューアルを進めており、1220か店(15年5月末時点)のうち、1208か店で改装を終了。モバイル機器の充電ができるコンセントの設置やマンガを置くなど、顧客ニーズにあわせた店づくりを強化したほか、ドライブスルーやテイクアウト専用窓口の設置など、サービスの拡充にも取り組んだ。
同社は「国内既存店売り上げの増加で、販管費などのコストアップを吸収できました。(好調の要因は)それに尽きます」と分析している。
厳しい「修行」積んで、FCオーナーになれるのは10%程度
「ココイチ」の国内店舗数は、カレー専門店としてはダントツの1220か店。そのうち、直営店は183か店(いずれも、5月末時点)。「ココイチ」の売り上げは、多くのフランチャイズ(FC)店が支えているというわけだ。
じつはFC展開が上手に機能している背景には、「ブルームシステム」と呼ばれる研修制度がある。通常FCの場合、資金さえあればオーナーになれるが、「ココイチ」でFCとして店をオープンするには、正社員として入社し、5年ほど他店で働く必要がある。壱番屋は「いわば修行で、FCは『のれんわけ』のようなものです」と話す。
「当社の経営理念を理解してもらい、ノウハウを身につけてもらいます。同時に、FCオーナーとしての店舗運営の適正や、人材や資金などの管理能力などをみています。理想と現実に違いを肌で感じてもらうことで、オーナーになってから、『こんなはずでは』という、ギャップがないようにしています」と、「修行」の重要性を説く。同社によると、「FCオーナーになれるのは10%ほど」という。
海外展開が順調なことも好決算の要因の一つだが、海外店舗も壱番屋とフランチャイズ契約を結んだ現地法人が、直営店とFC店を展開する。海外店舗は5月末時点で143店舗。2015年2月にマレーシア、3月にはフィリピンにも初進出するなど拡大している。
海外でも日本と同様に、FCオーナーは「修行」を積んでからの出店。「ココイチ」の海外での売上高は102億円と、20年前に進出して以来、初めて100億円を超えた。