政府専用機「交代劇」には「実より名を取った」の指摘も
JALは毎年夏に767-300ER型機をパラオに運航しているが、こういった実績も政府には評価されなかったとみられ、12年に民主党が政権を失ってからJALにとっては政治的な「逆風」が続いている。
中でも逆風を象徴するのが、19年度に行われる政府専用機の買い替えだ。これまではJALが整備を担当していた現行747-400型機の老朽化が進んでいることから、政府が後継機の機種選定や整備委託先を募集したところ、JALとANA(正確には親会社のANAホールディングス)が応募。両社とも現行の主力大型機、ボーイング777-300ER型機を提案した結果、「機体の性能、機内の仕様、後方支援、教育訓練、納期、経費等について評価を行ったところ、最も高い評価となった」としてANAの提案が採用された。ANAがJALよりも割安な提案をしたことが大きいとみられ、この交代劇には「実(=利益)より名(=名誉)を取った」という指摘もある。
こういった交代劇が今回のチャーター便運航の受注につながったとの見方もできそうだが、ANA広報部では、チャーター便の運航は
「基本的には競争入札ですが、必ず(編注:JALとANAの)2社とも入札するとは限らず、その場合は随意契約となります」
と説明しており、政府専用機の件とは、
「全く関係ありません」
と強く関連を否定した。
「ナショナルフラッグキャリア」の指標になる国際線の事業規模でも、すでにANAがJALを上回りつつある。14年4月の運航実績では座席数と飛行距離(キロメートル)を掛けた「座席キロ」(ASK)と呼ばれる指標でANAがJALを上回ったのに続いて、14年5月には、運んだ旅客数と飛行距離を掛けた「旅客キロ」(RPK)でもANAがJALを追い抜いている。14年3月の羽田空港国際線の発着枠がANAに多く配分されたことが影響した。
JALは10年の経営破たんで大幅に路線を削減したこともあり、関係者は「規模の大きさは追求しない」と口を揃える。これに対して、ANAは15年度だけでも成田-ヒューストン、成田-ブリュッセル線を開設するなど拡大傾向が続いている。