「素晴らしい着眼点」――演奏なし、歌だけ本物、という形ながらも人気を集めるバンド「ゴールデンボンバー」のボーカル・鬼龍院翔さん(31)が、「エアーバンド」で成功すると確信したきっかけを明かし、ネット上で絶賛されている。
実際に演奏しなくても良い、と鬼龍院さんに気付かせたのは、意外なやり方でライブを楽しむ人々が多かったからだ。
「○○さんと目が合った!きょうのライブは最高だった」
鬼龍院さんは2015年7月4日放送のトーク番組「サワコの朝」(MBS)に出演し、ゴールデンボンバーがエアーバンドになったきっかけを語った。
結成当初こそ演奏をしていたが、ギター・喜矢武豊さん(30)が「ものすごい(ギターが)下手」「本当に音楽のセンスが無い」と分かり、違う方法で目立つための戦略を練る。それが、バンドメンバーを「賑やかしというか、コンパニオンみたいなもの」にする作戦だった。
この作戦はさまざまなライブを見に行ったり、ライブイベントに出演したりするうちに、間違っていないと証明される。
自分たちを含む複数バンドが出演したライブイベントでのこと。「何あの演奏しないバンド。音楽をナメているとしか思えない」とゴールデンボンバーを批判した他バンドのファンがイベント終了後、「○○さんと目が合った!本当にきょうのライブ最高だった」とブログに書き込んでいる。これを見て、「意外とみんな演奏を聴いていない」ことに気付いた、と番組で語った。鬼龍院さんがエアーバンド路線を固めたのは、この時だった。
楽器弾ける人は舞台(ステージ)上でふざけたがらない。下手でも目立つ喜矢武さんは辞めさせられず、代わりのギタリストも招かれなかった。ゴールデンボンバーがエアーバンドという形を選んだ背景に、鬼龍院さんの巧みな戦略が隠されていた。
ネット上では、
「素晴らしい着眼点だ」
「核心をついてる良い分析」
と賛同、共感の声が広がっている。
確かに、バンドやアーティストを音楽以外の理由で支持するファンは多い。中でもメンバーの「見た目(顔)」は頻繁に挙がる要素だ。それを売りの1つにするアイドルグループやビジュアル系バンドなどは「顔が好み」といった理由で、一定数に受け入れられている。純粋に音楽自体が好きだと表明するファンは、こうした人々を「顔ファン」と呼んで蔑む。ネット上では、同じバンドやアーティストのファン層で、双方による「内輪もめ」がしばしば起こる。
ただ、「顔ファン」も音楽に全く興味が無いかどうかは不明だ。あくまでも、各種SNSや掲示板、ブログなどでメンバーの見た目にしか言及しないため、そう呼ばれているに過ぎない。
ともあれ、ゴールデンボンバーは音楽以外の要素を求めるリスナーのニーズをうまくつかんだ、というわけだ。