ボロボロ東芝、創業以来最大の危機 不適切会計、故意の操作 疑わせる事例も

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   不適切な会計処理が発覚した東芝で、問題が拡大の一途を辿っている。2015年6月25日に開かれた定時株主総会では経営責任を問う声が相次ぎ、田中久雄社長らは釈明に追われた。

   初めに明らかになったインフラ関連工事以外でも、故意による会計操作を疑わせるような事例が続々と判明し、経営トップの進退問題に発展するのは必至。経団連会長も輩出した名門企業もボロボロだ。

  • 問題は拡大の一途を辿る(画像は東芝のホームページ)
    問題は拡大の一途を辿る(画像は東芝のホームページ)
  • 問題は拡大の一途を辿る(画像は東芝のホームページ)

監視委には東芝関係者から内部通報?

   今回の問題の経緯をもう一度整理しておこう。まず15年2月12日、証券取引等監視委員会が東芝に対し、金融商品取引法に基づく報告命令と、帳簿類の開示検査を行ったのがきっかけだ。監視委には東芝関係者から会計問題を指摘する内部通報があったとみられ、当局に押される形で東芝も実態解明に乗り出さざるを得ない事態に陥ったのが第一幕。決して、自浄作用が働いて、自ら問題をえぐり出したわけではなかった。

   約1カ月後に決算発表を遅らせる発表して表ざたになり、内部調査が本格化。そして、東芝が不適切処理の具体的内容をまとまった形で発表したのが、監視委の命令から3月を経た6月12日。まず、インフラ関連工事では、問題のあった9件について事業概要や不適切処理の内容を発表。問題になった事業は次世代電力計とされる「スマートメーター」の通信システムや高速道路のETC設備の更新、海外の地下鉄関連などで、2014年3月期までに累計512億円も営業利益を水増ししていたと説明。受注時点で損失の可能性を認識したにもかかわらず、将来の損失に備えた引当金を計上していなかったり、具体的な裏付けがないコスト削減策を原価に反映させたりするなど、意図的な会計操作を疑わせる事例が目立った。

テレビ、半導体、パソコン事業で具体的な「手口」が明らかに

   この日の発表では、インフラ関連の9件以外にも、子会社を含めた全社的な自主チェックの結果、12件の不適切処理があり、利益を計36億円水増ししていたことも発表。販促費などの費用計上を先送りしたり、受注規模が大幅な未達になる見通しになったのに引当金の計上を先送りしたりするケースなどがあった。

   こうした状況で開かれた6月25日の株主総会では、テレビ、半導体、パソコン事業で不適切処理の具体的な「手口」を初めて明らかにした。大型スクリーンを使って、前田恵造・最高財務責任者(CFO)が説明したところでは、(1)テレビ部品の納入業者と調整して原価の一部を翌期に付け替え、利益を先取り、(2)安く仕入れた部品を委託先に一度売って組み立てさせた後に完成品を買い入れるパソコン事業では、完成品在庫が増えると部品を売った利益が膨らむことを利用して利益を水増し、(3)半導体事業では、原価を適切に見直さず、利益を過大に計上――などが行われていた可能性を説明。このほか、販促費や広告費の経常先送りなどもあった模様、といった具合だ。

14年3月期までの5年間で水増し1500億円規模?

   元東京高検検事長の上田廣一弁護士をトップとする第三者委員会は調査を続行中で、こうした不適切処理が意図的に行われていたか、組織ぐるみの不正か、経営陣がどこまで問題を認識していたかなどを明らかにする見通しだ。7月中旬をめどに調査報告をまとめ、これを受けて東芝は8月末までに2015年3月期決算を盛り込んだ有価証券報告書を提出。さらに経営責任を明確化したうえで、9月に臨時株主総会を開き、新たな経営体制を確立する予定だ。

   営業利益の水増しは、株主総会時点で会社側が認めた500億円余りから一段と膨らむ見通しで、2014年3月期までの5年間で1000億円超になり、1500億円規模に達するとの報道もある。

   田中社長自身、株主総会で「創業以来、最大の危機」と語ったように、名門企業が数カ月にわたって決算発表ができない異例の事態。経営トップの進退問題に発展するのは必至との見方が日増しに強まっているが、不適切処理は主要事業のほぼ全てに及んでいるため、役員や事業部門幹部の多くも監督責任を問われる立場とあって、後任の経営陣を選ぶのも難航するのは確実だ。

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