小林節慶大名誉教授、維新の安保対案に「これは合憲」 与党との修正協議含め国会は波乱含み

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   政府・与党が今国会で成立を目指す安保関連法案は「違憲」だとして猛反対を受ける一方で、維新の党が決めた「対案」は、かなり違った反応を受けている。政府案の「存立危機事態」に対して、維新案では「武力攻撃危機事態」と呼ばれる独自の概念を設け、武力行使の要件を政府案よりも明確にした。

   こういったことが奏功して、政府・与党案を非難していた小林節・慶應義塾大学名誉教授は「これは合憲だと思う」と明言。他にも同様の見解を示す学者がおり、少なくとも「違憲」だという点での批判は避けられそうだ。ただ、それだけ与党案との隔たりは大きく、国会審議の行方は不透明だ。

  • 小林氏は維新案には「お墨付き」を与えた
    小林氏は維新案には「お墨付き」を与えた
  • 小林氏は維新案には「お墨付き」を与えた

引き続き集団的自衛権行使は認めない

   維新の対案では、「武力攻撃危機事態」を、

「条約に基づきわが国周辺の地域においてわが国の防衛のために活動している外国の軍隊に対する武力攻撃が発生し、これによりわが国に対する外部からの武力攻撃が発生する明白な危険があると認められるに至った事態(我が国に対する外部からの武力攻撃を除く。)」

と定義。日本防衛のために活動している外国軍が攻撃され、日本が攻撃を受ける危険性が明確になった場合に限り、これまでの個別的自衛権を拡張する形で自衛隊の武力行使を可能にした。引き続き集団的自衛権の行使は認めない。

   武器弾薬の提供や、戦闘行動のために発進準備中の航空機に対する給油・整備を禁止するという点も、政府案との大きな違いだ。いわゆる「グレーゾーン事態」については、自衛隊による「海上警備準備行動」を新設することを柱にした領域警備法を新たに制定する。

   対案は7月2日の臨時執行役員会で正式に決まり、7月3日午前には自民・公明・民主に提示。これに対して自民党の高村正彦副総裁は、速やかに対案を国会に提出し、与党案と一緒に議論することを求めた。

   維新は臨時執行役員会に先立って、小林氏を招いて対案に対する意見を聞いている。この場で、小林氏は政府案が想定する「存立危機事態」は「架空」だと非難しながら、維新案については、

「これであれば、伝統的に許されてきた個別的自衛権の範囲内に収まっているし、最近顕在化してきた一見新しい危険にも対応できる。私は、これは合憲だと思う」
「出過ぎてもいないし、引っ込みすぎてもいない」

などと高く評価。政府案に反対していた伊藤真氏ら数人の憲法学者にも意見を聞いたが、維新案を違憲だと主張する人はいなかったという。

   小林氏は、政府案に比べて維新案の方が、日本に対する直接的な危機について明確に表現している点を評価しているようだ。

「国の存立とか国民の人権とか、ややこしいこと言わずに、武力攻撃を受けたら、海の向こうに迫ってきている(例えば)第2次朝鮮動乱。だったら次に来るに決まってるじゃないですか。米軍が戦っている以上、米軍基地は法的交戦状態。これは誰も否定できない。これまでの解釈の範囲内」

   返す刀で政府案の「存立危機事態」を改めて批判した。

「荒唐無稽な事実に加えて、単に選択肢がなくて、必要最小限(の実力行使をうたっている)。まったくつながっていない。条文が国語的にぶっ壊れている。それを使って安倍総理が唯一想定できるのがホルムズ海峡の機雷(掃海)。解釈も論理的、国語的に壊れている」

「集団的自衛権肯定論に引きずり込まれる」は「被害妄想」

   ただ、小林氏が学者に意見を聞く中で、維新案にも個別の論点で2つほど異論が出たという。ひとつが、

「個別的自衛権で処理できるのに、新たに法律をつくる必要はない」

という意見。小林氏はこの意見を「勘違い」だとしたうえで、

「軍隊の出動というのは大変な国家権力だから、ちゃんと道筋の手続法がなければ軍隊は出ちゃいけない。新しい事態に対応するには手続法の整備が必要」

と反論した。もう一つは、

「この手の議論に乗ることが、結局、集団的自衛権肯定論に引きずり込まれる」

という意見で、小林氏は「被害妄想」だと切り捨てた。

   維新によると、小林氏、伊藤氏、阪田雅裕・元内閣法制局長官を含めて合計8人の有識者が維新案に対して合憲だという見解を示したという。

   菅義偉官房長官は15年7月2日夕方の会見で

「個別論点についてはコメントは控えたい」

としながら、

「こうして野党の中でも対案を取りまとめて、そうしたものが国会で議論されることによって、国民の皆さんにとっては『どこの部分が問題がある』とか『安全保障のためにどうすべき』といった議論が深まっていくと思う。他の政党にも、党内をまとめて対案を出してもらえれば、より内容が分かるのでは」

と歓迎姿勢だ。

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